メモ
罪と罰
時々唐突に思い出す。 以前、すきだった、ひと。 過ぎてしまった日の、今はとっくに冷え切ってしまった、熱かった思い。
今あのひとは一体どうしているだろう? しあわせ、なんだろうか。 時にはわたしと同じように、わたしのことを思い出したりするんだろうか。
ふと思う。 わたしのことを忘れられずに苦しんでいたらいい。 しあわせになんかなっていて欲しくない。
ふと思う。 わたしのことなどすっかり忘れて毎日しあわせに暮らしていたらいい。
多分どちらも真実で、どちらも偽りなんだ。 だっておしまいになったあの日、心底あのひとに興味を失ったのだから。
愛することの反対は憎しみなどではなく、存在を認識しないことなのだろう、と云ったのはあのひとだった。 皮肉なことにそれを実感させてくれたのもあのひとだった。 ひどいことをされたのに、憎しみさえ覚えなかった。 なんだっていい。どうだっていい。 生きていても死んでいても関係ない。
それなのに、思い出すのは。 無かったことにはならない罪とそれを忘れないための罰なのかもしれない。
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