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2012年06月18日(月) 象の鼻はなぜ長い

息子につきあって『おかあさんといっしょ』をよく見ている。その『おかあさんといっしょ』では、子どもたちをスタジオに招いておにいさんおねえさんが一緒に歌って踊る通常の放送と違い、子どもたちをスタジオに招待しない特別コーナーが放映されることがある。以前におこなわれた特別コーナーでは、おにいさんおねえさんが探偵に扮していろいろな疑問を解決するというシリーズがあった。

その日のお題は「ゾウの鼻はなぜ長いのですか?」というもの。ゾウの鼻はなぜ長いのかというような問いに対しては、いかようにも解釈することができるように思う。生物学的にそのような組成になっているということを示してもよいかもしれないし、鼻がみじかい象も昔はいたけれど、今は死んでしまったといった説明をしてもよいかもしれない。解剖した図をみせて、ほら確かに僕らと同じような鼻なんだねとやってもよいような気もする。あるいは「神様がそのようにつくられたのだ」でもいいかもしれない。つまり、どう答えたとしても、どうやっても「なぜ」そうなのかという問いに答えるには不十分である。どう答えても、いちおうの答えになるような気がするが、どう答えても答えにならない。こういうのをアポリアというのである。

しかも、このコーナーは幼稚園にあがる前の幼児がみている番組である。高尚な言葉での説明をされてもわからない。目でみてはっきりわかるものでなければならない。どうやってそんなことをするのだろうと思ってみていたら、スタジオのお姉さんがすかさず、こうつぶやいた。「うーん、象の鼻はただ長くてブラブラするだけなのかなあ」と。つまり、言い換えたのである。この発言をうけて、お兄さんは「ブラブラ長いんじゃなくて何か働きがあるはずだよね」といい、そこから調査の方向性は「象の鼻はブラブラするだけじゃなくて、どんなことができるのだろう」というものになった。

お兄さん、お姉さんはかくして動物園でゾウは鼻をつかってどんなことをするのかを調べにいった。そして、実際に動物園にみにいってみたところ、象の鼻は実にいろいろなことに使われることがわかった。食べ物をつかむためにも使えるし、水あびをするためにも使える。大変鼻の力はつよくて、おにいさんおねえさんがつかまっても持ち上げることができるということがわかった。なるほど。そのような映像がながれた後、最後におにいさんおねえさんは「ブラブラしてるだけじゃなくていろんな役にたつんだね」といってこのコーナーをしめた。ここではお兄さん、お姉さんによって巧妙に問いの変形がおこなわれている。つまり、「なぜ象の鼻は長い」というアポリアから、「象の鼻は、長くなければならないような機能をもっているのか」という検証可能な問いへの変形である。論文で問いをたてるとは、このように、最初の大きな問いを、扱えるような小さな課題におきかえていくということだ。大きな問いがないような論文は面白くないが、かといって大きなままでは先に進まない。そして、大きな問いをしぼりこんでいく過程では、お姉さんのつぶやきのような、いくつもの声に応答していくとやりやすい。先行研究とか、ゼミでの討論というのはそういう声を提供しているわけである。


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