ひぽこんコラム

2013年10月02日(水) 統合失調症がやってきた

PS:↓その後、この編集から電話あり。私が書評をやることになりました!! まだ精神科医には依頼をしてはなかったそうです。おおおっ。怒り勝ち?




 昨日の夕方のこと。うちのパン屋でパンを買って、川内ありおさんの実家に遊びに行こうとしてたら、電話が鳴った。出たら、ちょっと前に「この書評をやりませんか?」と営業してた編集の人から。

 本は「統合失調症がやってきた」という、松本ハウス@お笑いコンビの書いたもので、片方のハウス加賀屋が中学生から統合失調症で、ボキャブラとかで人気絶頂の中で再発、闘病し、復活を果たした、その道程を相方の松本キックが書いたやつだ。

 これ、本当に良かった。ものすごい良かった。松本ハウスの、あの切れ芸、ハウス加賀屋が加賀屋でえええええええええええす!とドカ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンと画面に出てくるだけで、もう、画面から本当に飛び出してきそうなほどに迫力あって、すんげええ笑ってたんだけど、あの爆発的なパワーの底に統合失調症があったんだ、と思うと、もう、すごい胸がキュンとした。

 彼が発病したのは中学生のとき。幻聴が始まって、何がなにやら分からなくて辛くて辛くて。その前、本当に優等生だった時代があって、彼は自分を抑圧して、抑圧して、それを解放したはずだったのに、発病してしまった。抑圧と解放と発病。それは順番にやってくるんじゃないんだと知った。

 そして芸人として大成功してる中で発病して、もう、一声も出せないほどにひどくなって、閉鎖病棟に入院して、そこは読んでいて涙が出るような本当に閉鎖されている場所。異様に狭くて窓もなくて、ドアには内側にドアノブがない。つまり、自力では脱出不可能。恐ろしい監獄みたいな場所だ。その息苦しい場所で、彼は部屋の中をグルグルする。隣の同じような部屋には叫ぶ人がやってきて、その叫びを聞かされ続ける。
 医者もひどくて、極度の副作用が出ても注射ばかり打たれて、彼は舌が震えて震えて食事も満足に出来なくなって衰弱してしまう。だけど、奇跡的に医者が代わり、それによって少しずつ良くなる。

 そして、復帰する。
 でも、復帰しても、今もテレビにはあまり出ていない。彼らを見るのはバリバラ(障害者の番組)ぐらいで、フツーのお笑い番組でまだ松本ハウスを見てない。トークショーやら「統合失調者」としてTVや雑誌に出演することはあっても、MXとか千葉テレビとかでしか「お笑い」としてはまだ出させてもらってない。

 いじりにくいとか、そういうのがあるんだろう。あの人は病人、統合失調症の人をどういじったらいいのか、どこまでいじったらいいのか分からない。下手したら、視聴者から抗議がくる、危ない。止めておこう、TV制作社側の思いは、そんな感じじゃないかな。
 
 もちろん、お笑いのレベルが下がったとか今のお笑いに合わないとかもあるのかもしれない。正直、ネタはバリバラで1〜2度見たが、それはフツーだった。でもフツーであり、つまらないわけじゃない。それにフツーのレベルのネタなんてザラだ。てか、ネタなんたもう、ほとんどTVではやらなくて、お笑いの人はみんなトークばっかりだし、今は。だから、トークでからみづらい、ということでまだフツーに「ひな壇」には置いてもらえないのだろう。統合失調症患者への扱いのハウツーがテレビにはない。それが、テレビにおける統合失調症患者のお笑い芸人の現実。人気が出る前にも演劇評論家とやらに「障害者を出しちゃダメでしょう」と言われたらしい。

 で。昨日の編集者は「本はすごく良かった。ので、これは精神科の専門の先生に批評してもらうことにしました」というのだ。

 はっ?
 何それ?
 それ、私が出した企画じゃん。私が言うまで、その人はその本のことを知らず、読んで、感動したとか言ってた。企画だけ盗んで、ライターはサヨナラって、仁義に反するだろ? それはやっちゃダメなことじゃん?

 1回は電話を切ったが、どうしても腑に落ちなくて電話した。そして言った。

 どうしてそうやって統合失調症だから専門家って高いところに上げちゃうんですか? そうやってメディア側が統合失調症は難しいこと、下手なこと書いて読者から抗議が着たら困るから、ここは無難に専門家にお願いしておこうって、まるで腫れ物にさわるようにするから、いつまでたっても統合失調症への理解が進まないんです。松本ハウスがこの本を出したのは、そういう偏見を取っ払い、身近なものとして理解して、という願を込めて出したのに、どうしてそんな風に遠ざけるんですか?

 そう言ったら、そうですねそうですね、と言って。でも、じゃ、サヨナラって。。。。

 なんかもう、脱力して、ガックリして。その媒体は特に弱者の味方です、とうたってるとこなんで、何が味方だよ!と怒りも爆発した。

 実はその前にも、別の媒体で、頼まれてた仕事を大御所ライターの一言で奪われて、仕事なくなる事件なるものもあって、私は今、もう、完全にやる気を失ってる。

 昨日、オカンが電話してきて、「沼津の土井製菓が新しい工場造るからって人を募集してるよ」ってうれしそうに言ってた。私がオリンピックがイヤだから沼津に帰ろうかなと言ってたから、探してきたんだ。

 年内にも東京を去る準備をしたほうがいいのかもしれない。そろそろ潮時?

 そうそう、昨日、この話をブチ怒りながら、川内家で話していたら、そこに来てた友達の1人が「統合失調症って何?」と聞いてきた。そうなんだ。そうなんだよね。みんな、それ何?なんだよね。

 もう、何もかもイヤだ。本当に。全員クソくらえ、死ね死ね死ねという感じだあああああああああ!と、昨日は川内家で叫んでいて、そしたら川内ママが最高においしいご飯を作ってくれて、それを食べてる間は幸せだった。でも帰り道、中野にチャリを置いてあったから、ゴキゴキ30分漕いで帰ってくる夜道の間に、また怒りが猛然と湧き起こって、その極地に至った。

 世界中呪ってやる。全員死ね。死ね。死ね。怒りたけって、自転車を猛烈に漕いだ。

 でも家に帰って来て、また「統合失調症がやってきた」を読んだ。

 そこにハウス加賀屋の思いとしてキックさんが記してる文章を再発見した。
 
 本当のことを言うと、僕は「負の力」で仕事をしていた。恥ずかしい話だけれど、僕は自分が売れたことに、こんな思いを持っていた。「ざまあみろ。僕は病気で、薬を飲んでるし、グループホームにまで入ってたんだぞ。それが、テレビにも出て、お金も稼げるようになった。ぼくのことをバカにしたみんな、ぼくをダメなヤツと笑ったみんな、ざまあみろ!」
 人を怨む、世間を呪う「負の力」。
 これは、簡単に恐ろしいパワーを生み出してしまう。
 どうにでもなれというパワーは、人を圧倒し、魅了することすらある。
 だけど、それは必ず自分に跳ね返ってきて、自分を追い込む危険な刃物だ。
 だから今のぼくは「正」の力で物事を考え生きるようにしている。怨まず、呪わず、感謝する。100パーセントできてる自信はないが、心がけるように努めている。

 
 普段、格言みたいこととか、いいお言葉みたいのとか、クソくらえっ!と、大嫌いだけど、加賀屋のこの言葉は沁みた。

 すごい実感があって。ものすごい苦しみの中から沸いたこの言葉は本当に沁みた。

 これは本当にすばらしい本です。あらゆる人に読んでもらいたい。「統合失調症がやってきた」 イーストプレスから、1300円。書いたのは相方の松本キック。加賀屋が療養中も、ひたすら黙って待ち続け、どんなときも加賀屋の味方で、加賀屋を楽しくイジってくれる人。「今のオマエは『今のオマエ』やから、できることをやったらええんよ。できなことは『できません!』それでええんよ』と言ってくれる人です。

 すげぇ、いいコンビだ。
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