DJ SEO's DIARY

2003年04月18日(金) >>二人の『神』

10代まっさかりだったころ、
本気で愛し、尊敬し、憧れた二人の男がいた。

今でこそ声を大にしてまでは言わないようになったのは、
僕が大人になりすぎたからなんであろうか?

約10年前の僕には絶対的な存在―――――
すなわち『神』そのものであった二人。



その二人とは―――――
んまあ、僕の事をちょっとでも知ってくれてる人なら
その内の一人はわかるでしょう(?)

あの未発表曲が発表されてからというものの、
「ちょっとストレートすぎるんじゃねーの?」とか
文句たれつつも、しっかり毎月選曲しちゃうあのバンドのあの男です。

で、もう一人とは誰か?


その男とは、昨日とうとう現役生活を引退したバスケット・ボール界の
スーパースター、マイケル・ジョーダンである。
中学、高校とバスケしていたのもあって、
当時はかなりのNBA通だった。
中学生時代は本当に好きで、実際のところ前者カート・コバーンよりも
自分自身への影響力は強かった。

マイケル・ジョーダンは本当に凄かった。
初めのスリーピートを達成した91〜93シーズンあたりは、
もうマイケルのプレイにくぎ付けで、その時のビデオは今でもある。

マイケルはスリーピート(3連覇)を達成した時にこう言った、
「マジックもバードも成し遂げれなかったことが、俺にはできた」と。

その時、彼は『神』になった。


僕の『神』は絶対的な存在だったが、彼はその年の夏(93年)、
衝撃の引退を発表した。正に全盛期での引退だった。


僕の『神』がいなくなった・・。
当時の僕にとって、カートはまだそこまでの存在には達していなかった。


94年春、カート・コバーンがいなくなった。
自分の中でのカートが急激に大きくなっているのを感じながら、
カートが残したメッセージの中の一節―――――――――
ニール・ヤングの「ヘイへイ、マイマイ」からの引用で
「消え去るよりは、燃えてなくなってしまった方がいいんだ。」
――――を、ずっと考えていた。


カート・コバーンは、自分の能力が衰えてしまったあげく、
「過去の産物」として、消え去ってしまうのを・・・恐れていた。
パンク・ロックから多大な影響を受けていたカートにとっては
自分の人生もアートであり、クールでなければならなかった。

「偶像化を拒否する」と生前言っていたカート・コバーンは、
なぜか自ら死に、そして『神』になった。


その1年半後、なんとマイケル・ジョーダンがコートに戻ってきた。
世間は「神がコートに帰ってきた」と騒いだ。
実際動きはそうとう鈍っていたが、それでも彼は再びスリーピート(3連覇)
を達成し、まだまだ実力は健在なのを充分にアピールした。

そして、また引退を表明した。
『神』は一時人界まで降りたものの、また天に上った。



人間誰でも、もちろんカート・コバーンでなくとも、
全盛期を過ぎてしまった引き際を知らない人間ほど、
無様なものはないと思うだろう。


やっぱかっこ悪いよな、そんなの。


だが、『本当の神』はどうなんだろう?
自分は絶対無二な存在で、絶対無敵の力を持ちながらも
実際はすごい孤独なんじゃないのか?


マイケルは再再度、40歳近くになりながらもコートに復帰した。
もう彼には以前のキレはなく、シュート率も低下。
決定的な場面では、必ずと言っていいほどシュートを決める
あの勝負強さも、もうそこにはなかった・・・。


しかし、彼は、あえて、降りてきた。

彼は『神』から『人間』になったのだ。


年齢のハンデがもちろんあるにしろ、
彼は目線を他の選手と同等に合わせることで
勝負のスリルや敗北の屈辱を味わい、
そして仲間に自分のバスケットに対する情熱を伝えた。


彼は『バスケット・ボールの神様』である前に、
一人のバスケ好きだったのだ。


だが、結局マイケル・ジョーダンの最後のシーズンは
プレイオフにも出場できずに終わった。

こんな終わり方は、ファンとしてはやっぱり寂しいのが本音だ。
あんなに上手かった人が、ここまで衰えを見せるなんて
10年前は誰も思っていなかっただろうから。



・・・でも、とても人間らしかった。
最後には何も飾らなかったんだから・・・。


マイケル・ジョーダンは、アスリートの”頂点”と”限界”を
かつてないほど明確に世間に見せてくれた。



「偶像化を拒否する」とカートは言った。
「俺はシアトルに住む、その辺の兄ちゃんと変わりない」とも言った。

・・・が、カート・コバーンは結局のところ
自分の一番人間らしい部分である”限界”は見せなかった。
・・・いや、見せたくなかったと言う方が正しい。


カートは結局死んだんだから、やっぱりそこまでの男だったんだろう。


だけど、それで死んじゃうカートのしょぼさは
とても人間らしいとも思う。グズなんだから。




「消え去る」と「燃え尽きる」


僕の中での答えは未だでていないが、
僕の中で偶像化された二人の『神』は、その10年の後に
僕対してそれぞれの答えを返してくれたと思う。


ありがとう。



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