想
目次|過去|未来
「 テルミィは立ち止まり、そこに座り込んだ。やはり、疲れが出て きている。この先、たとえ、今度は楽しいものが待っていようと、 新しい環境に入っていくのはいつだって力仕事だ。・・・」 梨木香歩『裏庭』より
‘小説’というよりも‘物語’という方が正確に思える雰囲気の話を読んでいる。 主人公のテルミィは、愚かではあるが、主人公らしい一生懸命さを備えた女の子だ。
引用した小説とはかけ離れた話になるが、 僕が小学生の頃まで住んでいた、引っ越す前の家には、裏庭があった。 夏になるとアメリカシロヒトリ(という蛾)の幼虫が大発生する木があって、 他にもいくつかは問題があった気もする。 けれど、ちょうど風呂場の裏に当たるその裏庭の向こうには、 ピアノを弾くお姉さんが住んでいて、いつも夜には何かを弾いていた。 とても巧いとは言い難かったピアノを聴きながらの、それでも少しだけ贅沢な気分の風呂。 そんな想い出の風呂場も裏庭も、今はもう無い。 我が家の4人家族が今のマンションに引っ越してから、 すぐにその家は建て替えられた。 今は、当時から住んでいた祖母と叔父と、新たにその奥さんが住んでいる。
こちらがなんとなく時間を過ごしている間に、 全ての物事は具体的に変化していく。
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