想
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| 2003年09月15日(月) |
時の流れを電話帳で知る。/『朗読者』と『平面いぬ。』 |
‘好きだった人’がいる。
‘付き合った’わけでも‘振られた’わけでもなく、 今想えば、‘憧れ’とも少し違う。 ただ単に純粋に‘好きだった’人。 大好きだった人。 ・・・かなり昔の話になる。
その人の電話番号やメールアドレスが、PHSの電話帳に登録されている。 以前は、電話帳のかなり前の方にその名前が登録されていた。 けれども、いつのまにか、 その人の名前が出てくるまでには少し時間がかかるようになった。
自分が肌で感じる時間の経過は、もちろんある。 それとはまた違った時の流れに対する、えも言われぬ想い。 たくさんの人々との出逢いに覆い隠された、遠い記憶。 気付かぬ内に随分と遠くなってしまった、大切な想い出。 大切な人。
下世話なことを言えば、 一度もヤってないから余計に忘れられない、みたいな。 ・・・失礼失礼。
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『朗読者』を読んだ。 人生には、潜在的な自問自答が、いやと言うほど隠されている。 ところで、完全な物語(「フィクション」と言ってもいい)のつもりで 気軽に買った新潮文庫だったが、とんでもなかった。 如何に自分が世の「書評」と言われるものを気に留めていないか、よくわかった。
そういえば先日、 乙一(おついち)という人が書いた『平面いぬ。』という短編を読んだ。 こざっぱりとした文体で、独特の視点があって、 文章全体が別段技巧的というわけではないけれど、 根底にあるアイディアが大変魅力的で、面白かった。
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