-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 結婚の美術担当


友達から「結婚する」とメールがあった。
トロントで知り合った友達で数えたら
何人目になるだろう?
たぶん、右手から始まって
もう左手の真ん中くらいだ。

そして、お祝いとして絵を注文されるのも
ほぼ同数になるだろうか。
まるで映画を作るなら
美術担当:トモレノンだな、みたいな
暗黙の了解が友達の間であるのだろうか?

いずれもオイラがまだ絵で食えずにいた時代の仲間だ。
売れない頃を
彼らが支えてくれたとは言わないが(ヒドイ)
それでもポストカードを買ってくれたり
ショーの手伝いやボランティアをしてくれたり
何かとサポートしてもらってたことは
時にはお金以上のありがたさで
オイラを何度も救ってくれた。
一生忘れることはないだろう。

また、時には
周りの友達に知れ渡るまえに
こっそりと「結婚するんだけど・・・」と
絵の相談を持ちかけられたりもする。
そうなると
罰せられることのない重大な秘密を共有する
奇妙な連帯感も生まれる。

我ながら幸せなことだと、その知らせを受け取る度に思う。
一生に一度(多くの人にとって)の儀式に
ささやかながらオイラの作品が一役買える幸せ。
考えようによっては
その人の人生の一部になるのと同等ではないか。

午後、Bloorのカフェでその
半年後には新郎・新婦と呼ばれるであろう二人に会う。
トロントに来た一年目に出会った友達は
ほとんどが移民となってカナダに留まっている。
こんなに長く居て、移民じゃないのは
オイラただ一人だ。
そして年齢が違っても皆、タメぐちで会話する。
一見、「人生百戦錬磨」に見える彼女も
まだ二人で並んで座るのが照れくさいのか
初々しいほどの気遣いを相手に見せる。
へぇ〜、意外だ。
でも、一体どんな絵を二人が望んでいるのかは
その場の空気を吸うように、スッと肺に入ってくる。

美術担当は、決してメジャーなポジションではないが
ガンコな職人みたいに「オイラに任せとけ」っていう
経験で勝負みたいなところがある。
わずか30分ほどで話をまとめる。
あとは良い絵を描くだけだ。



2005年02月18日(金)
初日 最新 目次 MAIL HOME