-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 Gladstoneホテルの葛藤


Gladstone ホテルにて第一回目の打ち合わせ。
アシスタントとして建築学校に通う隣人アツシと
そのまた卵、マスミを連れて行く。

それまで電話のみで話していた
責任者のスワンと初対面。
作業着に身を包んで
いかにも【現場監督】って雰囲気を漂わせている女性。

いよいよ実際に部屋を見て
どの部屋を手掛けるかを検討する。
もう館内大改装といった雰囲気で
職人達があちこちで作業をしているけど
以前とは見違えるほどキレイになった館内に驚く。

歩きながらスワンと打ち合わせを続ける。
オイラの【巨大繭玉】のアイデアは
会議の段階では絶賛だったらしいのだが
物理的な問題で断念する方向へ傾く。
え!?そうなの?














主だった理由として
破損した場合に取替えが効かないことと
日々のメンテナンスが難しいことが挙げられる。
確かに、宿泊客がどういう行動に走るかは予測できないし
あのデザインがそれを誘発させる可能性は否定できない。
数日間のアートショーだったら完璧だけど
実際にそこに人が泊まり、
何年も同じコンディションを保つのは
確かに難しいだろうね。

壁面のペインティングも「キュートすぎる」という理由で
縮小もしくはデザイン変更を要求される。
うーん、【巨大繭玉】もダメ、壁面も変更となると
オリジナルのコンセプトからどんどん遠ざかってしまう。
せっかくアーティストを使って部屋をデザインするのなら
そのくらいは飲んで欲しいよな。
ちょっとイライラする。

3、4階の各部屋を見て廻り
それぞれに順位を付ける。
他のデザイナーとバッティングした場合の予備だ。
オイラが一番気に入ったのは
南向きの明るい窓と、レンガの壁がある408号室。
広すぎず、狭すぎず丁度良いサイズだ。
しかし、コンセプト自体が変更されるので
自分でもハッキリと確信が持てないまま
単に好みだけで選んだような気がする。












一階ラウンジに戻って
今度はテーブル上で議論する。
インテリアデザイナーではないので
専門的な事はよく分からないが
お互いの求めている事が相対するものであると認識する。
オイラはコンセプトありき、だ。
Room designed by tomolennonと表記される訳だから
やっぱり一環したコンセプトに基づき
自分で恥ずかしくないデザインをやりたい。
それはホテル側も理想とするところだ。
しかし、理想と現実は違う。

外には「アーティスト達がデザインした部屋」と理想を謳うが
内情は、いかにリスクを減らし
実用的でメンテナンスに手間の掛からないものにするかを
第一優先で考えているようだ。
それだったら、いっそのことアーティストになんか
デザインさせなきゃいいのに。
でも、分かるのだ。
【それ】をリニューアルの売りにしたいんだから
今更「普通」のデザイナーに発注は出来ないと。

プロ、アマ問わず70組以上の候補者の中から
わずか14人だけが最終的に選ばれた。
その一人として、オイラは恥ずかしくない仕事をしたい。
ここで

「やっぱ辞めるわ」

と言えたらどんなに楽かと思うけれども
一方では、与えられた条件の中でツッパッて
最高の仕事をした方がカッコイイと思うところもある。

5年前、英語も喋れずにトロントに来たオイラが
今ではアーティストとして飯を食っていけるようになって
今また、ホテルの部屋をデザインするなんていう
その分野の人が聞いたら嫉妬するようなチャンスに恵まれて
これ以上、文句なんて言ったら罰が当たる。
何に対してツッパるか?が昔と今では全く違う。

そう思ったら、何故かポジティブな気持ちになってきた。
【巨大繭玉】はダメになったけど
壁面の縮小プランと、第二候補として温めていたデザインを
この代替案として提出することにして
今日のミーティングは終了した。

カフェに立ち寄り、建築を勉強している2人からの
アドバイスを受けようと
どんなデザインがいいか?
また、自分だったらどんな事をしたいか質問をする。
自分で言うのもイヤラシイが
オイラの発想の豊かさには誰も敵わないな、と思った。
2人に対してだけでは無い、
これまで色んな異分野の人と交わってきた中で
オイラよりも斬新で、現実的で、なおかつ速く
いくつものアイデアを出せる人なんて居なかった。
居たらもっと謙虚になれてたはずだ。
ホント嫌な奴だね。
でも
人がオイラに対して
「根拠のない自信満々」と言うが
根拠はそこなのかもしれない。
人がどう言おうと
オイラが自分の将来を信じて疑わないのは
その発想力がケタ外れだからだ。
この妄想は年々ひどくなっていく。
10年後には、妄想を通り越して
それで食ってるかもしれない(笑)


2005年02月15日(火)
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