-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 其の3『N.Y.1日目』

朝7時過ぎに目覚める。tomolennonはすでに起きていて眼孔鋭く流れる景色を見ていた。
マンハッタンを目前にボクはワクワクしていた。
“こうなりゃ夕べ、ナイアガラでインスペクターに質問攻めにされオロオロした事も
前に座っていたブサイクなカップルがイチャイチャしていて苛ついた事も全て忘れてやる。
だから、早く着いてくれ!”ってなモンだ。
ところが、そんな願いとは裏腹にバスは朝の大渋滞の中へ入って行った。
ぐるり360度、バスバスバス。どっか知らないところに連れてかれて強制労働させられるんじゃないか?
と思う程、たくさんの人がN.Y.へ向かっていた。
「ほら、あれエンパイア」
tomolennonが指をさした。
「おおっ!」
基本的に田舎モンなので、ちょっとした事でもスグにアガってしまう。
10年前に上京した時のドキドキ感に似ていた。
4年前に来た時も、同じ気持ちを抱いた事を思い出した。
バスが到着し、荷物を受け取ると朝食を取り、それから外へ出てタバコに火をつけた。
「さて、どうするか?」
このどうするか?はこれからではなく、今夜の宿をどうするか?だ。
インフォメーションセンターで地図をもらい、その後、図書館へ。
tomolennonは、
「オレ、この辺で描けるトコ探して、もう絵を描きはじめるよ」
と言う。しかし、5分も経たないウチに
「この辺、描きたいトコないなぁ」
ボヤいている。
それから10分ほど歩き、やってきましたNEW YORK PUBLIC LIBRARY !!
建物を見たとたん
「おっ、コレ描くわ」
ヨカッタヨカッタ。
開館時間となりボクは3Fへ駆け上がり自分のパソコンを出した。
が、ない。LANケーブルがない。。。
とりあえず、貸し出しがあるかどうかを聞いてみる事にした。
答は、NO。
じゃあ、今日だけかしてよ。と言うもNO。
頼むよ、無いと困るんだよ。それでもNO。
仕方が無いのでここに併設されているデスクトップを使用する。
調べモノを済ませて外へ出てくると、ハンパなく寒い。
そんな中、tomolennonは絵を描いている。さすがは、道産子だと感心した。


ボケッとしていても仕方が無いので、先日トロントでやったジャズイベントに出演してもらった
百々 徹さんに電話をかけてみる事にした。
「どーも、お久しぶりですー!」ボクの声はやたらでかかった。
いま考えてみれば、今夜、泊めてちょうだい!と下心丸出しだった。
百々さんに「とりあえず、またかけ直します」と言われ電話を切った。
…。手持無沙汰になったボクはtomolennonのアイディアで、彼のプリント(絵)の売り子になった。
「どーですかお客さーん」と心の中だけはいっぱしの売り子なんだけど、やはりどうも苦手なんですボク。
勇気を出して声をかけてみるが、ハタからみたらバッチリ挙動不審者なだけに、ササーッと逃げられてしまう。
そんな時、百々さんから電話をいただく。
“ヨッシャー、宿ゲット!”と思っていたら、予想に反してNG。ズーンと重くなる。
3時を過ぎ、かなり寒くなってきて、指の先なんて全然感覚がなくなった頃、ボク等はGrand central駅へ移動する事を決意。
てくてく歩いて行く。駅の中は、相当あったかかった。寝てもイイですか?と思わず聞いてみたくなる程だ。
彼は、警察の人から許可をもらい、場所を決めて構内を描き始めた。
気を抜くと、いまにも寝てしまいそうだったので、日記を書き始めた。
だけど今夜の宿が決まってないのにそんな事をしてるもんだからtomolennonに注意されてしまった。
「あっ、そっか。」とカバンとダラーショップの袋を抱えて、その場を離れる。
先週末にメールを打った新聞社の人達に電話だ。そう思い、意を決してかけてみるがつながらない。
どうにもならん。と半分あきらめモードに突入。最後にもう一回百々さんにかけてみる。留守電。残念。
メッセージを一応残して、彼のもとへ戻った。
結果を発表します。とボクが言うよりも早く、彼は口を開いた。
「ゴメーン、客のがしたぁ!」
よくよく聞いてみると、色々と話をする中で値段の交渉までこぎつけたが、時間の関係で惜しくも売れなかった。との事。
そりゃ、しょうがない。
オナカの減ったボク等は、ゴハンのスポンサーになってくれるところを探しに外に出た。
人間、食べなければ生きては行けません。
そこで、道ですれ違う日本人に片っ端から声をかけ、ラーメン屋さんを教えて下さいと聞いた。
何人目かのグループに声をかけるとたまたまtomolennonの知り合いの子だった。
「おー、なにやってんのぉ?」的な会話がかわされ、連絡先をばっちりもらって別れた。
さて、当たって碎けろ精神で、1件目NG。2件目OK。うそーっ!?
tomolennonの交渉力の強さには感服します。
絵を一枚選んでもらって、10回分のゴハンをゲット。スゴイ。スゴすぎる。
で、その2件目のお店というのは、151East 43rd St.(Lexington Ave.とThird Ave.の間)にある、
Ata-Ruと言うジャパニーズレストラン。
まずは記念写真って事で、大将のサトウさんとマネージャーのマリアさんに入ってもらってtomolennonとパチリ。

サトウさんもマリアさんも他のアルバイトの人達もすごい気さくで、なんと言うかチャキチャキな感じがイイ。
Ata-Ruは丼ものが売りっということで、今日のメニューは『マーボー丼』いやっほーい!
ありがとうございます。今日から早速いただきます。
食にありつけた嬉しさに思わずアガる。食べる。ウマイッ!!!!!

たまらん。ボクはサトウさんマリアさんそしてtomolennonに感謝した。
それからボクのケイタイに百々さんから電話があった。
「今晩だけなら泊まってもイイですよ」
マジっすか?ボク等かなりついてるよね。
ゴハンを食べ終わり、百々さんが今夜出演されるという“Cleopatra Cafe”に向かう。
Ata-Ruが、151East 43rd St. で、Cleopatraが、92-93Broadway…。
腰が抜けるほど遠い。しかし、行かねばならぬ何処へでも。
「ごちそうさまでしたー!明日から宜しくお願いしまッス!」
それから、凍えるように寒いN.Y.の夜道を重い荷物を引きずりながらボク等は百々さんの元へ。
途中で休憩を入れたり、スーパーでカートをかっぱらって、それで荷物を運んだりし、2時間チョットの散歩道は終わった。
そのまま、Cleopatra に入ってしまうと百々さんに迷惑をさらにかけてしまうので、となりのカフェで、
1ドルコーヒーを買って、百々さんの終わりを待つ。
深夜1時すぎに、百々さんは他のジャズメン2人とともにやって来た。
うーん、いつ見ても百々さんは知的でカッコイイ。そんな知的な百々さんは、チーズケーキを上品に食べた。
話の中で、百々さんは最近、知り合いの方から車を頂いたそうだ。なんともウラヤマシイ。
5人の男は、百々さんカーに乗り込んだ。途中2人のジャズメンを送り、車はボク等を乗せてさらに進んだ。
百々さん宅に到着すると、預かって来たビデオとCD-Rを渡す。
百々さんは家に来たゲスト全員の写真をポラロイドで撮影されているらしく、
せっかくなんでボク等も撮っていただいてそこにメッセージを書き込んだ。
それからズズッと緑茶をいただき3時すぎまでおしゃべりをする。
フトンを用意していただいて、ながーい一1日は終わった。


2004年12月24日(金)
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