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■ 【NO KIMONO】ファッションショー...
「胸騒ぎがする・・・」とは、どういう状態か はっきりと認識することができた。
今日、【Tokyo Doll2-NO KIMONO-】は 初日のオープニング・ファッションショーを迎える。 前夜にRafiとデザイナー達との間で起こった確執。 それは、一昼一夜で解決できるものではなかった。
【JazzEx】が一段落ついたショーゴを連れて ちょっと早めに手伝いに行こうと思っていた、その時 Rafiから一本の電話があった。
「Everything is messed up...(全てが滅茶苦茶になった) I will commit sucide if...(もう自殺してしまいたい)」
慌ててDXに駆けつけた時、そこにRafiの姿は無かった。 冷静を装いつつも、視点が定まらない。 どこだ、あいつは!? フロントデスクには「もう戻らない」と伝言を残してるらしかった。 リハーサルが始まっているはずの会場は 未だに設営準備に手こずっており DXの責任者Eliseは、頬を硬直させながら対応に追われてる。 「Rafiは!?」と聞くと さっきから携帯が繋がらないと言う。
ダメもとで掛けてみる。 ・・・・ 出た。 「今どこにいる?えっ、屋上!?」
休日のこの日、エレベーターは警備員に頼まないと 使わせてもらえない。 非常階段を使って78階へ走る。
いた!
床にへたり込み、こっちを見上げている。 何がどうなってんだ!? 時間を掛けてゆっくりと訳を聞くべきだと思ったが 今、こうしてる場合じゃない。 とにかくショーを開催する方向へ動かさないと 本当にキャンセルになって、 莫大な損害になって、 信用も何もかも失って、 本当に自殺しなきゃいけなくなるじゃん! この日のセットだけでも数百万掛かってるんだぜ
とにかくRafiを地階へ下ろし すぐさまデザイナー達に事情を確認する。 彼らに用意されるはずだったランチも 届く見通しが無いらしかったので 3人を連れて外に食事に出る。 食事をしてる場合じゃないのは分かってる。 でも、今彼らの意思を確認しなければ そもそもショーの開催は無いのだ。
彼らも、このショーの為に 莫大な予算と、時間と、プライドを掛けて乗り込んできている。 中途半端なショーに出るくらいならキャンセルした方が まだ傷が浅くて済むという意見も分かる。 COCOONのヒロミさんに至っては ショーで使用する楽曲とPVが入ったImacを 当スタッフに誤って削除されてしまうという 絶対にあってはならないミスに打ちひしがれていた。 だから「お願いだから出てください」と頼むのでなく、 現状の、どことどこを改善、クリアすれば可能になるかを 必死に探り出す。
状況は把握した。 DXに戻ってすぐ、Rafiを外に連れ出してこう言った
「ショーをやらせる!そのかわり 「ここから、俺に総指揮を取らせてくれ。」
当日になって監督が変わる。 我ながら大胆な事をしたと、後になって思ったが もうそれ以外に道がなかった。 当然、スタッフ達は困惑する。 一部の顔見知りのスタッフを除いては 初めて見る、このアジア人の小男は何者だ!?と思ったろう。
新聞やTVなど、メディアの報道陣が集まりだしたので そこはRafiに一手に引き受けてもらう。 オイラはバックステージに突入し、 ヘア・メイク、モデル、音響、照明、会場スタッフ全てに 今、何をやるべきか、次に何をやるのかを指示。 この時間になるまで、全てが曖昧に進んでおり スタッフの混乱も相当なものだった。 「これをやって!」と言ったところで すんなりと聞き入れてくれる訳じゃない。 烈火のごとく、質問や苦情が噴出する。 それら一切を受け付けず、 完全にオイラの指示を一方通行で押し付ける。
「Just do it !(とにかく、言われたことをやれ!)
何度もその言葉を怒号した。 単純に見積もっても、予定の開場時間には間に合わない。 Eliseに、開場時間を延ばすことを打診。 かなり厳しい。
合わせて、デザイナーの登場順も変更する。 当初のプログラムを破棄して組み替えなければ 絶対に間に合わないからだ。 この判断はタフだった。 重複するモデルがいるため 順番が変わると、ヘアもメイクも着替えもやり直しなのだ。 しかし、それしか選択肢は無い。 どんなに苦情や問題が発生しようと ショーがキャンセルになる以上に最悪なことはない。 ショーを開催する、ただそれだけに集中するのだ。
それから一時間が経過し、 やっとリハーサルが開始できる状態が整った。 一番手はCOCOON。 ヒロミさんに相当無理にお願いして準備を急いでもらった。 失われた音源は戻ってこず、 急遽調達したものでショーに望むというハンデ。 音楽が流れ、本番さながらにモデルが登場したと思ったら 突然、音楽が止まり、マイクテストが始まった。 唖然とするヒロミさん。 表情は、ハッキリ言ってキレている。
それまでも、各セクションのスタッフは てんでバラバラな動きをしていたが この音響のミス、というか自分勝手な行動に オイラもマジ切れ寸前。 そいつを呼び出すも、トイレに行ったとかで 全然戻ってこない。 見つけた瞬間、胸ぐらを掴んでぶっ飛ばす勢いだった。 「お前ら、一人の命が、人生が架かってるんだぞ!」 周りのスタッフに慌てて止められた。
リハの時間は極少。 各セクションが協力し、本番と同じものをやらなければ リハーサルの意味は無い。 本当に、頼むから理解してくれ、という感じ。
リハが続いてる間、一番問題がある三田くんを説得する。 この時点では、まだ彼の答えはNO。 和紙で繊細に作られた洋服は モデルに着せるのに一人45分もかかる。 ヘア、メイクのチェンジを考えると これから準備を始めてプログラムの時間に ステージに登場するのは到底不可能だ。
そこで出た苦肉の策は、 本番のショーと切り離して「特別出展」という形にすること。 5人のデザイナーのショーが終わった一時間後に 別枠で三田くんのショーだけをやる。 それしかないと、とにかく説得を続ける。
一方では、ヘアメイクを担当している化粧品【MAC】は 契約が7時までだから、それ以降は残れないと言い出した。 そして、数人のモデルも三田くんの時間までは無理だと言う。 せっかく三田くんを説得してるのに モデルも、ヘアメイクも居なければ元も子もない
これ以上、遅らせられないという ギリギリまで押して、ついに開場。 あっと言う間に300〜400人の観客で埋まる。 Rafiの挨拶、来賓である日本総領事のスピーチが始まった。 その舞台裏では、本当に壮絶なバトルが繰り広げられていた。
三田くんは、まだ首を縦に振っていない。 オイラは、とにかく追加のギャラを払うから スタッフ、モデルに残るよう説得。 そっちが決まんないとYesって言うわけないよな。 念のため、今から召集可能なヘアメイク・アーティストを 調べるようスタッフに要請。 それでまたDX側と大揉め。 うるせーよ、オイラの言うこと聞け! 完全に悪者だ。
オープニングアクトに続いて COCOONのショーが始まった。 音楽と照明が打ち合わせ通りになってることを 確認して、すぐさまバックステージへ戻る。
大勢のスタッフを一挙に動かすことにも限界がきた。 EliseとShandraに直属で付いてもらい 指示が下までいき渡るよう、トランシーバーを使用させる。
COCOONのモデルが、そのまま三田くんのモデルになる。 終わったばかりのモデルを捕まえて ヘアメイク修正の手筈を整える。
問題だったヘアメイクが、残業で一人残ってくれることになった。 モデルも、両親に電話で謝罪をして、残ることを了承してもらう。 あとは三田くんだ。 ヒロミさん、シュウコウくんと3人掛りで説得。
「よし、わかった」
キター! そこから水門が開いたように 一気に物事が流れ出す。

急げ、急げ、時間が無い! 登場予定10時を15分過ぎた時、やっとスタンバイ。 シュウコウくんの墨絵パフォーマンスが始まる。 つづいて、坂本龍一&テイ・トウワによる 今回の為に用意した曲が流れはじめ ステージにモデルが登場。 一際大きい観客のどよめき。

この瞬間、オイラの役目は終わった・・・。
Eliseをはじめ、スタッフがきて 代わる代わる抱きしめあう。 「本当にみんな頑張ったね。ありがとう。」 泣いてる子もいる。 終わって戻ってきたシュウコウくん、三田くんとも抱き合う。 最後の最後、本当によく決断してくれた。
怒涛の一日が終わろうとしている。 深夜1時を廻って、最後の観客を送り出したあと ロビーでRafiと2人きりになった。 オイラは複雑な思いだった。 去年の【Tokyo Doll】を境に オイラは「もうキュレーションはやらない!」という Back to the artist宣言をした。 それによって、今回はRafi一人のオーガナイズで 【NO KIMONO】が開催されたのだ。 時々、手伝っていたとは言え、完全にRafiのイベント。 丸1年かけて、大変な苦労をしてこの日を迎え、 本来なら、奴の晴れ舞台になるはずだった。
今回の失敗には幾つもの複線があった。 オイラはそれに気付きつつも、楽観視していた。 Rafiのオーガナイズだし、横から口出しちゃマズイな、とか まぁ何とかなるだろう、くらいの気持ちで。 今思えば、もっと真摯に受け止め アドバイスを与えられたんじゃないか?と思う。 ある意味、Rafiを見殺しにしてしまった張本人はオイラだ。 終わってから言い出してもしょうがないけど。
Rafiは何度も「ありがとう」と頭を下げたけど、 とんでもない。今日オイラがやったことは お前が1年間費やしてきた時間と熱意に比べたら何でもない。 ただオイラは、失敗するならするで、 少しでも責任を分かち合いたかっただけだ。 お前だけに責任を取らせる訳にはいかないって。 俺たち、今までもそうだったじゃん!? 頑張ろうぜ、また。
2004年12月04日(土)
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