Author : yuzu

 


『夜を乗り越える』又吉直樹


『夜を乗り越える』を読みました。

又吉といえば芥川賞受賞者。
なぜ芥川賞を受賞されるほどの本が書けるのか、そもそも本にこれほど親しまれてる方だったのだと
この本を読んで知りました。

なぜ本を読むのか、ということに向き合われていて
本を読むのは、共感と新しい感覚と出会う為、というところが大いに共感できます。

又吉は
太宰治との出会いで大きな影響を受けられたようです。
太宰治の小説のキャラクターに自分を重ね、同じ考えの人がいるということに救われているらしい。
『人間失格』を年に一度は読まれているのだとか。
そして、読む度に新しく発見することがあるらしい。

そういう風に言われると『人間失格』が気になって仕方なくて、
今日借りてきちゃいました。
私は何かを感じられるでしょうか。

他にも又吉が影響を受けた本がいろいろと紹介されています。
紹介というよりも、この本に出会って衝撃を受けた、本は面白い
だから自分は本を読むのだと、
ひたすら、そんなことを書かれています。

なのに最後まで飽きさせない。
同じことの繰り返しのようでいて、読み進めるほどに、理解が深まる。

そして、いちいち書いてあることが興味深く、芥川賞受賞されるのも納得の文才を感じました。
又吉ならではの感覚だなと思わされるところが多々ありました。
太宰には笑いがある、というんです。そう言われると、私も笑いを感じられるのか確認したくなります。
私にも感じられるのか、又吉だから感じられるのか、そんな視点からも読んでみたい。
そして、サッカーをされていた経験もあられるので、ところどころにサッカーと重ねて説明をされてます。
私もサッカーに例えて何かを説明することがあるので、通ずるものを感じます。
それから、たとえが面白い。
全員が同じ考えだったら毒キノコをみんなで食べて全滅とか、
芸術のすごさが分からない人はクマの怖さも理解できず死ぬんじゃないかとか、
本を読むというところで、そんな発想ができるのは芸人さんならではだなと思います。

そして、本や作家さんの紹介のところでも、この人はこんなところがすごいんだ、
自分はこんな時に出会ってこんな影響を受けたんだ、
というのもそれだけでも面白いですが、
又吉が言うには、本のある一部分を切り取るだけではその言葉の良さは伝わらないんだと、
その言葉の意味を伝えるために物語が必要なんだと。
その部分もなるほど、と思えた箇所で、
その視点から考えるなら、なぜ本を読むのか、ということについて、これだけ長く過去のことから関わってきた人達のことから、自分の体験を書き、
だから本を読むのだと説明されているのだなと納得できるし、
本や作家さんの話でも、どういう状況の時にその作家さんや作品と出会ったのか、から書き始めるということも納得できました。

どういう状況の時にどんな本に出会ってどんな影響を受けたのか。
この本は、それを軸に書かれています。

最後の方で、これであと2年は生き延びられる、と書かれていたのが印象的でした。
本を読むのは生き延びるため。

なぜ生きるのか、という言葉もありました。
なぜ本を読むのか、という問に向き合うと同時に夜を乗り越えること
辛い気持ちを抱えて過ごしてきた日々を乗り越えてきたことを振り返られている。
夜を乗り越えることとなぜ本を読むのか、ということが同義というのは共感できるけれど、そのテーマで文章にしてしまうのはすごい。

太宰治と芥川龍之介に、生きてもっとこういうことを書いてほしかった、と述べている箇所も印象的でした。
作家が死なずに生きていたらどんな作品を書いたのか
そんなこと考えられるんだなと。
私が思っていたよりもずっと深く本と関わって生きてこられたというのが
この本を読むと本当に理解できます。

太宰治の他にも紹介されていた本や作者さんがすっかり気になってしまってます。
古井由吉さんという方が特に興味深くて、
今日図書館で借りてきましたが、なんと今年亡くなられていました。
又吉は何を思っただろう。

本の最後で、僕はまた読む側に戻る、という言葉で終わったんですが、
できることならもっとずっと、又吉が本について語る文章を読んでいたかった。

すっかり又吉に気持ちを持っていかれました。
恋焦がれるほどではないけど、今何してるのかなと気になるくらいには。
今日も本を読んでいるのかな。
またいつか本について語ってくれるといいなと思います。



・・・・

ここからは私の話。
なぜ生きるのかというのは私のテーマでもあり、彼のテーマでもある。
だからこそ、この本に共感するところも多かったようにも思うし、
同じ思い?を持っている人が、本を読むことで救われているというのなら
私が本を読むのも、決して間違いではないのだと正当化しようとしている。
私も本で救われるといいのにな。

帰国されてから一度も連絡が来てなくて、かなり精神的にきてます。
このまま連絡来ないんじゃないかと不安。
こんな時どういう立場でいたらいいんだろう。
何しても気分が浮上しなくて、鬱々と過ごしてます。
そんな中で『夜を乗り越える』を読んで、共感したり、新しい感覚と出会ったりしながら
読んでる間はフラットでいられた。
私にとっても本は夜を乗り越えるためのものと言えるけど、
読み終わった今は、又吉の本への情熱がもうどこにも感じられなくて
私は一人なのだと実感して、さあどうしようかと途方に暮れてます。
本には救われるけど、全然救われない。

同じ思いを抱える人の最高峰として又吉直樹を崇めながら生きていくかもしれないです。


それにしても連絡来るといいな。
今の状況はつい悲観的になってしまう。
私も、これであと2年は生き延びられる、って言いたい。
 

2020年05月17日(日)


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