2012年09月23日(日)   連絡をとりたいけどとれない大切な人たち

宣伝会議賞に応募し始めようかと、情報を集めるほど
“コピー”という言葉に触れることが増える。
そのたび、去来する思いがある。


私が幼稚園生の時、大好きなせっちゃん(叔母。母の妹。)が
ミッキーという人と結婚をした。

ミッキーというのは「あだ名」で、(ミッキーは九州出身の日本人。)
本当は正博さんという名前だと認識したのはだいぶ後のことで、
もはやミッキーはミッキーでしかなく、それは30年近く経った今でも変わらない。

そんなミッキーの職業は“コピーライター”だった。

学生時代は早稲田でバンドをしていて、ミス早稲田にもなったせっちゃん
上智を辞めてあいしーゆーを卒業したミッキー
2人はカミキタザワで暮らしていた。

両親が共働きだったので、
私は“せっちゃん家”によく遊びに行っており
夏休みなどは1週間単位でしばらくお世話になることも多かった。

コインを置くとぱくっと食べてくれる不思議な貯金箱
たくさんの本
待ち合わせはシンジュクのマックで
夜になると私服で仕事から帰ってくるミッキー

当たり前のように私は2人に憧れた。

ミッキーの部屋はいつも物がたくさん置いてあって、
どれもこれも面白そうなものばかり。
本棚に並ぶ本のタイトルを眺めるだけでわくわくした。

そんな私を見てミッキーは「これならのりちゃんでも読めるよ」と、
『軽い機敏な仔猫何匹いるか』という本を貸してくれた。

“かるいきびんなこねこなんびきいるか”

回文。つまり逆さ言葉の本だった。
これなんて短いほうで、2ページに渡る回文超大作なんかも載っていた。
言葉って面白い。
私の原点になった。

あれから20年以上が経ち、
その本が土屋耕一さんというすごい人の本ということを知った。

“すごい人”を知る課程で知った、
資生堂やライトパブリシテイ、派生してサンアドや一倉宏に憧れた。
「言葉」を大切にしたい、といつも思っている。

デザインの仕事、販促の仕事、広告の仕事、広報の仕事、
私にとってキラキラした世界の仕事に携われている現在。

仕事でも、日常でも、
つくった何かで人をしあわせな気持ちにしたい という性質は
きっとあの頃から養われていたんだろうと思う。


今は事情があって連絡をとることができないけれど
連絡をとってはいけないだろうかと、いつも葛藤しています。

Facebookでも、せっちゃんとミッキーの名前で検索してしまうけれど
今のところ見つかりません。

借りっぱなしの「軽い機敏な仔猫何匹いるか」
いつか必ず、返せる日が来ますように。

2人は、お元気ですか?
私は、元気です。

こころから感謝を込めて。


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