仕事後、六本木ヒルズへ。レディースデーでイーストウッドの新作「グラン・トリノ」を観る。クリント・イーストウッドの監督作品を、私は「ミスティック・リバー」以降1本も観ていなかった。それくらいに「ミスティック・リバー」の衝撃が大きく、たぶんあれがイーストウッド作品のピークなんではないかなと思って、あれだけ話題になった「硫黄島からの手紙」もなぜか観る気にならず、実際まだ観ていない。ところが今年の正月にスカパーで「ミリオンダラー・ベイビー」を観て、なんでこれを劇場で観なかったか!と心から後悔した。にもかかわらずなんとなく「チェンジ・リング」をやり過ごしてしまいつつ、それでも駆け込みで「グラン・トリノ」は観れました。役者も良かったけど、「ミスティック・リバー」や「ミリオンダラー・ベイビー」にはない秀逸なやり取りの脚本でテンポが良かったのも好きな感じだった。
エンディングの音楽でイーストウッドが最初だけ歌うんですが、そこから続くジェイミー・カラムのボーカルやらピアノやらもみんな温かいものを守る優しさに溢れて、受け継いでいく者を明るく照らしているようで泣かすのだった。クレジットを見てて、ジェイミー・カラムだと確認。加齢による脳と耳の老化で、地味な顔立ちや地味に歌うまいところや名前なんかもジェイソン・ムラーズといつも見分けがつかなくなる、などと思いつつ場内が明るくなっても座ったまま余韻に浸っていたら、隣に座っていた若い女子が一言「最初のほうで寝ちゃった」って!どこでだよ!?具体的に教えてくれ!と思ったのもつかの間、「っていうか、あの場面さー」と、今にも神様仏様クリント・イーストウッド様の作品に恐れ多くもいちゃもんつけようとしているので、これ以上耳に入れちゃダメだ!と慌てて席を立った。劇場を出ようとするところで、前を歩いていた老夫婦が「やっぱり良かったわね」と落ち着いた口調で言い合っていたのでホッとする。

カンヌ国際映画祭で黒澤明監督の『夢』の上映の際、会場に入ろうとした黒澤に対し突然群衆の中から現れ、「ミスタークロサワ」と言いながらほおにキスをし、「あなたがいなかったら、今の私はなかった」と感謝の言葉を告げたという。(イーストウッドのwikiより)
「星条旗」も「硫黄島」も「チェンジ・リング」も観ないわけにはいかないなあと思います。そういえば「星条旗」と「硫黄島」、両方の作品に1人も黒人が出て来ないと指摘したスパイク・リーを、「黙れ」の一言でスルーしたイーストウッド。どちらがナンセンスなことを言っているのか、気になるところでもあります。
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