2004年10月23日(土) 第10節 VS柏 * 観戦者

C大阪 1−1 柏

朝起きてしばらくして、体の違和感に気がつく。
頭が痛い。酒を飲んだわけでものに、コメカミがズキズキと痛む。
電車に乗っている間も、駅からスタジアムに歩いている間も、鈍い痛みに苛まれ続ける。
そして私は、サッカーを観戦することの意味を気がつくと考えている。
自分でサッカーをするのではなく、サッカーをしている他人を見て、
多くの人が一喜一憂することについて。
一喜一憂することの意味。
私は本当にサッカーが見たいのか。
なんでサッカーを見ているのか。
想像も出来ないほどの努力を積み重ねてきただろう選手を、見ている。
努力してきたのは、選手本人で、私ではない。
そして、私は選手の姿に、泣いたり笑ったり、時に罵ったりする。
こんな私になんの価値があるだろう。なんの意味があるだろう。
つまらないことを、きっとくだらないことを考えている。
チームが低迷していなければ、恐らくこんなことを考えたりはしてないんだろう、
そう思ったりもする。
答えは別にいらなかった。むしろ、欲しくなかった。
こんなことを考えるようじゃ、終わりだと思った。
自分の中のサッカーが終わりに向かっている気がして嫌だった。
逃げ道を探しているようで、腹立たしくもあった。
何も考えたくなかった。
意味なんて求めたくなかった。
価値なんてなくていい。

日立台に着いた。
席は2002年の天皇杯でVゴールを決めた寿人が、サポーターの懐に飛び込んできた辺りにした。
ピンクのビニールと応援歌の書かれた紙が配られる。
スタジアムに到着すると、頭痛は治まった。
日立台の狭いアウエイゴール裏は、いつもより人が多いように思えた。
試合が始まる30分以上前から、セレッソサポーターが歌いだす。
少しすると選手がピッチに出てきた。
日立台は、選手との距離が近い。何度来てもいいスタジアムだと思う。
キーパーまで4,5m。
絶対にサポーターの声は届くはずだ。
一つ一つの叫びが、言葉として届く距離だ。
選手の名前を叫ぶ。選手の何名かは、コールに胸を叩いて応えた。
私は、帯の脇へ移動をした。
ここまで帯に近づいたのは初めてだった。
こんな私でも頭数が増やせるなら、ピンクを濃く出来るなら参加しようと思った。
選手に全力出して、踏ん張れと言う以上、私も自分の限界まで応援をしたかった。
そうでなきゃ、選手に何も言えない。

試合が始まる。
コールリーダーがゴール裏に喝を入れた。

柏の守備が堅いのか、なかなかペナルティーエリアまでボールが運べない。
もっと遠めからでもいい。シュートを打って欲しい。
少ないチャンスを、嘉人がきっちり落ち着いて決めた。
先制。
嘉人がサポーターへ走り寄って来る。
喜びで、ピンクが揺れる。
前半を1−0で折り返した。

後半、セレッソのシュートは2本だけだった。
柏には8本打たれた。
同点にされたゴールは、シュートのこぼれ球をゴール前までつめてきた明神に入れられた。
下を向くな、まだ時間はある。落ち着け。
サポーターの声は選手の背中に届いているだろうか。
大声で叫び続けている喉が焼ける。
ピンチは、チャンスより多かった。
セレッソに余裕はなかった。しかし、勝機が全くないとも思えなかった。
なによりどんな形だろうが、勝たねばならなかった。
モリシが交代で入ってくる。
足の付け根が思わしくない、アキがベンチへ下がる。
どんどん時間が減っていく。
しかし、シュートが打てない。
後半43分、嘉人が竜と交代になる。
監督、何故だ!絶対嘉人は必要なのに!
試合終了の笛が鳴った。
伊藤さんが両手をピッチについた。立ち上がれない。
両チームの選手が中央に整列して、伊藤さんがくるのを待っている。
伊藤さんは、まだ立ち上がらない。
伊藤、まだ次がある。立て、伊藤!
数メートル後ろから、サポーターが声をかける。
鼓舞する。まだ、勝負は終わっていない。
伊藤さんが立ち上がって、中央に向かった。
選手は、神妙な重たい顔をしてゴール裏へ挨拶に来た。
ゴール裏は、セレッソコールで迎える。
サポーターは、諦めていなかった。
今日の結果に落胆してないとは言わないが、開き直りにも似た前向きさがあった。
迷いも、焦りも、もうなかった。これは多分腹を括った者、特有のものだ。
もう、残りの試合で技術的な面が飛躍的に伸びるとは思えない。
ミスをまったくしなくなるとも思えない。
突然強くなることもきっとないだろう。
今のセレッソは弱い。それは残念ながら事実だ。
でも、残留が出来ないとは決して思わない。思ってはいけない。
あと5節。
精神論は、嫌われるかもしれない。
戦術的、技術的な修正ももちろん大事だろう。
しかし、ここまできたら最後の最後は精神力の問題だ。
逆に言えば、精神力にしか糸口を見出せないくらいもがいている。
頭の中には「やるしかない」という言葉が浮かぶ。
聞きなれた言葉だ。目新しくもなんともないから、ただの綺麗事のように映るかもしれない。
でも、本当にそれしか言葉が思い浮かばなかった。
モリシが日記に書いていた「がんばるしかない」の意味が
以前よりも理解できた気がする。
とりあえず、今、頭痛は再発していない。


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やまいぬ