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2004年11月05日(金) NYの街角:アラビックカフェ/水タバコ

旧友、遠方より来る。マンハッタンからRラインで15分ほどのアストリアへ。アストリアは、もとよりギリシャ移民が多い街だが、アラブ系も多く、最近は人種も多様化したエスニックタウンである。

DEMITRISというグリークレストランでギリシャ音楽の生演奏を聴きながらシーフード。昨日もロックフェラーセンターのスケートリンク脇のThe Sea Grillで日本から来たパートナーにご馳走になったばかりだが、ここも負けず劣らず美味。



その後、アストリアの夜の街を歩く。アラビア語と思しき標識が多くなってくる。ここがNYとはとても思えない。エジプトレストランの怪しい外装が目を引く。濃紺のブルカを全身にまとった女性とすれ違う。まさかと思って振り向くが、既に夜の闇に溶け込んでしまったのか、もう見えない。友人が某投資家と携帯電話で商談している。人体に対する治験がまだ日本では許可されていない・・・とか原因分子の特定に関し疑義があるとの反論が予想される・・・云々という友人の流暢な英語での説明を聞くとはなしに聞きながら、彼も、自分もずいぶん遠くまできたものだと、感慨に耽る。



目的のアラビックカフェへ到着。ターキッシュコーヒーと、水タバコを注文。私はタバコは吸ったことがなく、これがタバコと名の付くものの初体験。周りのトルコ人に教わりながら、水タバコをふかす。少し空気を吹き入れ、温まったところを吸う。そして肺に暫く留めてから吐き出す。紅茶のような高貴な香りが肺に入ってくる。と同時に、気分が非常に落ち着くのを感じる。効果は速やかで、かつ徐々に変化してくる。指先の温度が少し冷えてくるのがわかる。友人は、タバコというよりマリファナに近いような感覚だと評する。その感覚は、頭の芯の部分がキャベツになったような感覚だというが、私にはその比喩が良く判らない。別の友人と、レセプター(受容体)の仕組みと麻薬やニコチンの中毒との関連についていろいろと話し込む。回し飲みをしているうちに、陶然とした気分になってくる。水タバコの上に置かれた炭を取替えにやって来る店員は英語が良く判らないようだ。周りの客は、みな水タバコを片手にバックギャモンに興じている。アラビア語のTV放送が、独特のドラマを流し続けている。水タバコの、こぽこぽ、という音が遠くに心地よく聞こえる。客の入れ替えはほとんどない。非NY的/非現実的に時間は流れ、夜は更けてゆく。しかし、と私は思う。NYのアラブ人街で、我々がこうして集っているこの現実の方がよほど非現実的なのではないか。同じ大学の、狭い教室で授業を受けていたあのころから、我々はどれほど遠ざかってしまったことだろう。

やがて我々は無口になる。水タバコの、こぽこぽ、という音がさらに遠く聞こえる。近くの客がダイスを勢い良く振った。

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