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2004年10月11日(月) ジャック・デリダ死す

ジャック・デリダ死す。

ポストモダニズムの最重要人物の一人であった。フーコーがまず去り、ドゥルーズが自決し、そして残る最後の一人が消えた。「私一人になってしまった」とは、ドゥルーズの死に際してデリダが述べた言葉だったが、いまや彼も歴史の中の人物となってしまった。

前世紀末の文学青年にありがちな話だが、私もデリダの「グラマトロジーについて」を大学時代に読んだ。脱構築とは何かを知る手がかりとして、と漠然と考えていた。ヨーロッパの言語体系に内在するフォノサントリスム(音声中心主義)を解体してみせた彼の手腕に感心した。

これを読んだ後に、文学研究会の一学年上の会長だった先輩と話をした。「漢字を使用するアジアの国々にあっては、書かれた言葉が思考に先行するのはむしろ当然のことであって、何をいまさら」という一言が忘れられない。

それ以来、ドゥルーズを経て、やがて本分である19世紀フランス詩人の研究へと舞い戻った私は、デリダの著作を開くことは二度となかった。それでも、時にはジジェクなど眺めては、つくづくフーコーたちは偉大だったのだなあ、と嘆息するのだった。

哲学というものが、これほど軽視されている時代は、かつてなかった事態かもしれない。「最後の偉大な哲学者」と誰かが評していたが、ジャック・デリダの死は、哲学なき歴史の夕暮れを暗示しているような気がする。安らかなれ、デリダの魂。

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