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2004年05月02日(日) 西海岸旅行記:シカゴ2日目/ゼファー号乗車



翌朝、寝不足にもかかわらずシカゴ観光のため市内を一周するバスに乗ろうと早起きする。ペン大の友人も一緒だ。カリフォルニア・ゼファー号の出発は午後2時30分なので、事実上午前中しか残された時間がない。市内を2時間ほどで回るバス・ツアーに参加。

シカゴは様々な建築様式のスカイスクレイパーが有名で、建築好きには興味深い街と聞いていたが、実際、市内観光バスのビュースポットは建築物ばかりだ。我々のバスのジョーク好きのガイドは、解説の合間にジョークを言っている時も決して笑わず、こちらが本気にしているとジョークである旨解説してくれる。整えていない長髪及び髭を生やしたこのガイドは風貌だけ見ると実に怪しいが、見掛けによらず建築について異様に詳しい。こちらはシカゴといえばフランク・ゲーリーの野外音楽場とバウハウス、ネオゴシックくらいしか知識がなかったが、図らずもポストモダン建築について色々と聞くことができたのは有用であった。



友人と昼飯を食って、再会を約し、ユニオンステーションへ。ラウンジに到着したのは出発予定時刻の1時間ほど前。寝台車は1等扱いなので、「高級」ラウンジで無料のコーヒーやソフトドリンクなどを飲みながらくつろぐことができるとアムトラックの冊子では解説されていたが、実際には調度品は普通のアパートのロビーより見劣りがするうえ、必ずしも清潔ではない。しかも、スペースが限られているとかで、荷物をチェックインせねばならず、無闇な荷物の移動を強いられる。30分前くらいに入れば十分であった。

やがて列車の番号がコールされ、長いプラットホームを移動し、指定の寝台に入る。



California Zephyr(カリフォルニア・ゼファー号)は、シカゴからサンフランシスコ近郊のエメリヴィルまでの約2,438マイル(約3,923km)の行程を約51時間で走り抜けるアムトラックの寝台列車である。シカゴ発西海岸行きの寝台列車は、California Zephyrだけでなく、他に3本ある。Empire Builderというミネアポリス経由シアトル行きの列車、Southwest Chiefというアルバカーキ経由ロスアンジェルス行きの列車、Texas Eagleというセントルイス/サンアントニオ経由ロスアンジェルス行きの列車である。いずれも人気があるが、ゼファー号はロッキー山脈を越える風景の美しさから非常に人気が高く、寝台は3ヶ月前から予約が入っている。シカゴ発なので、厳密には大陸横断鉄道とは言えない。しかし、レイクショア・リミテッド号でNYCからシカゴまで乗り継いでいるので、一応今回の旅は大陸横断と位置づけてよいと思う。

NY-シカゴ間の寝台はスタンダード寝台だったため非常に狭苦しい思いをしたが、今回はデラックス寝台だけに余裕がある。寝台を希望される方で余裕のある方は、少々高いがデラックスをお勧めする。なお、デラックス寝台はスタンダードと異なり、各コンパートメントにトイレ兼シャワールームが備え付けてある。ただし、シャワーの温度は38度に保たれていて、変えることができない。共用のシャワーも試してみたが同様。率直に言って、ぬるい。お湯の量も十分とは言えない。冬場はどうするのか心配になる。清潔さという点でも問題がないわけではないが、許容範囲。まあ、仕方がない。鉄道の旅とはそういうものだ。

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シカゴを出るとまもなくアテンダントが回ってきてディナーの予約を聞いてくる。何か質問は無いかと言われるが、すでに一晩乗っているので勝手はわかっていると返答する。

30分もすると、景色が一変する。都市から田園風景へ。田園の景色は日本の田舎と余り違わない。その畑以外になにも見えないほど広いという点を除けば。しばらくは車窓からの景色を見ていたが、友人と遅くまで飲んでいたためもあり、まもなく睡魔が襲ってくる。仮眠。

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しばらくして活動再開。午後4時頃、ためしに展望車(ラウンジカー)に行ってみる。タイミングが良かったことは後から判る。ちょうどミシシッピ川を通過するところだったのだ。ちょっとした見所のひとつに数えられている。「まもなくミシシッピリバーを通過します」というアナウンスとともに列車は徐行し始めた。人がラウンジカーに集まりだし、満席になる。赤錆びの浮く鉄橋にさしかかると、幅の広い水面が顔を出す。数艘の運搬船が実にゆっくりと河をさかのぼっている。この船は、鉄板や鋼板を運んでいるらしく、重さで喫水がかなり低くなっている。



ミシシッピリバー自体は透明度が高くなく、たいして美しいものではない。しかし、アメリカ人にとっては、この河は郷愁を誘う河である。「父なる河」という呼称が、その愛着のほどを示している。この鉄橋を渡るとイリノイ州からアイオワ州に入ることになる。

アイオワ州側ではカーギルの貨物列車のある車庫をとおりいくつかの古風な尖塔のある街に入る。そこでしばらく停車。名前も知らぬ街。



まるでゴーストタウンのようだ。人影が無い。眼に入る商店は、入り口が固く閉ざされて、人の居る気配すらない。今まで見てこなかったアメリカの側面を見るような気がした。

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やがて列車は動き出し、街を抜けて再び加速を始める。

やがて、「次はMt. Pleasant。後5分少々で到着予定」とのアナウンス。平原ばかりのこの場所を見ているので、(Mt. Pleasant?)とそのネーミングに首を傾げる。先ほどからの小雨は上がり、陽光が差してきた。到着した駅の周辺を見回しても山があるわけではない。結局駅名の謎は解けないままMt. Pleasantを後にする。



やがて夕食の時刻になる。典型的なアメリカンダイナーだが、それなりに美味い。

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平原に沈む夕陽の美しさを何に喩えるべきか。



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日が暮れて、早めにベッドに入る。窓の外は、いくつか街灯のオレンジ色の光があるほかは、なにもない。完全な闇だ。眠っている間にアイオワ州からネブラスカ州に入ったようで、深夜にオマハで目を覚ます。広告のネオンが輝く高層ビルが、遠くにいくつか見える。しかし起き上がる気力はなく、そのまま何時しか再び眠りの底へ。

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