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2004年03月30日(火) 掌編:霧で街灯の光が拡散している


霧で街灯の光が拡散している。車の列のテールランプが赤く滲んで路面に反射する。あの店の不自然な色のネオンだけがベールを貫いて輝く。舗道を歩く。幅のない舗道。「知らされた事実」を呑み込むための言葉がまだ見つからない。馴染みのない人々が流れてゆく。傘を差している人は稀だ。誰もが霧雨を顔に貼り付けて歩いている。誰もが無言だ。日暮れにはまだ早い。しかし、街は暗い。まだ濡れていない路面も次第に黒ずんでいく。まだ、探し続けている。無責任だからこそ、発することが許される言葉がある。だが、その言葉はたやすく失われ、損なわれるだろう。遠くで霧笛のような音が繰り返し響く。おそらく自動車盗難防止用の警報の誤作動だ。街は霧の中に沈黙している。その街で、中途半端な心を抱えて、苦行のように足を先に進める。

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