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2004年03月18日(木) 留学日記:Clifford Brownとフィラデルフィア


19st. & Samson St.の夕暮れ

最近、友人に10曲ほど代表的なJazz Artistsの演奏を紹介した。そのうち一曲は、Clifford Brownの演奏で、若き日のSarah Vaughanが歌う"Lullaby of Birdland"。少々解説を付した。以下はその抜粋。

「Clifford Brownは若き天才トランペッターで、歌っているのは若かりし日のSarah Vaughan(サラ・ヴォーンと読みます。彼女はVelvetの声を持つといわれた僕の最も好きなJazz Vocalistです。)です。Cliffordは、若くして誰もから認められる天才的な音楽センスを持って登場し、有名なJazz Artistたちからも引っ張りだこだったのですが、26歳の若さでPennsylvania Turnpike(注)での自動車事故(道路から飛び出したらしい)で夭折しています。このとき、Bud Powellの従兄弟のRichie Powellも一緒に死んでいます。」

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現在はそうでもないが、フィラデルフィアは、かつてはJazzと縁の深い土地であった。フィラデルフィアとJazzとの関係を考えるうえでClifford Borwnは非常に重要であり、無視するわけにはいかない。ほんの少しではあるが、書いてみることにする。

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Clifford Brownは、1930年10月30日、フィラデルフィアからほど近い、デラウェア州ウィルミントンに生まれた。ハイスクール卒業後、最初の自動車事故に遭うまでの1年ほどフィラデルフィアで演奏活動をしていたが、このころ、ウィルミントンで演奏したDizzy Gillespyに見出された。18歳の時にすでにMiles DavisやFats Navarroとフィラデルフィアで演奏していたようである。

最初の自動車事故(注)により一年間の入院生活を余儀なくされたが、その後再びフィラデルフィアを中心に本格的にプロとしての活動を開始する。Memorial Album (Blue Note BST 81526)のLiner notesによれば、フィラデルフィアで、彼はKenny Dorham, Max Roach, J. J. Johnsonといったビッグネームたちと演奏をしていたとのことである。

その後、演奏旅行のため北欧からフランス入りし、フランスのアーティストたちとの演奏を残している。演奏旅行から帰った後、しばらくの間、活動の拠点はフィラデルフィアではなくNYになったようである。この期間に多くの録音を残している。そして、最初の自動車事故からわずか4年後に、あの悲劇が彼を襲い、もう新しい録音がされることは永遠になくなった。

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Clifford Brownは、責任感が強く、しかも温和で誰からも好かれる性格だったようである。誠実な演奏と絶妙のハーモニーをもったアドリブを聴くと、何となくそれが判るような気がしてくるから不思議だ。数多くのArtistが彼の夭折を心から悼み、様々なコメントを残している。彼へ捧げる曲も作られている。

ここに来てから、彼が、フィラデルフィアのどの店で彼が演奏したのか調べているが、まだ見つからない。おそらくもうその店は残っていないだろう。何しろ50年近く昔の話なのだ。

彼が、1956年6月27日に古巣のフィラデルフィアでの演奏を気の合う昔の仲間たちと終えた夜、雨の降るPennsylvania Turnpikeに消えて以降も、フィラデルフィアの街中ではトランペットの音色が絶えない。休日ともなると、どこからか時に哀調を帯びた、時に陽気な音が響いてくる。その決して上手ではない演奏を聴くたびに、私は彼のことを想うのだ。

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(注:彼はその短い生涯に二度も自動車事故に遭っている。)
(注:Pennsylvania Turnpikeは、フィラデルフィア郊外のハイウェイで、私も何度か通ったことがある。)







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