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2003年11月05日(水) 身辺雑記:全てが霧に隠れてしまう前に




朝起きると、自室の窓から見えるはずの二つのタワーが消えていた。全ては白く冷たい霧のなかだ。高層階に住んでいるとこんなこともある。

観察していると霧にも濃淡があるのがわかる。それが流れていく。流れていくそばから、次の深い霧が視界を閉ざす。そして、意味もなく全てを覆い隠す。今日の授業はないが、外出したい気分でもない。こめかみが痛む。少々消耗しているようだ。心が弱っているのかもしれない。引きずり込まれるようにして思考の底の方へと潜航していく。形容しがたい無形の概念の領域を、検証済みの記号を頼りに訪ね歩く。無駄に終わる。どこからか、少し遠くから音楽が聴こえるような気がする。音の出所はわからない。陽気なジャズ・トランペットのはずだ。だが、霧のフィルターを通すと、それすらも哀切に響く。

認めよう。確かに僕は今朝、消耗しきっている。いや、今朝に限った話ではない。時間が意味を剥奪されてただ消費され続けている。異国語とまどろみのなかで日々は過ぎていく。衝動的に、価値の変わらない何かを、永遠に続く可能性を求めたくなる。それが例え幻想に終わるとしても。霧は全てを覆い隠そうとする。出発しなければならない、全てが霧の奥に隠されてしまう前に。







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