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約一年ぶりに法廷に立った。 国選事件の公判期日である。
私の所属している事務所は、訴訟事件をはじめとする紛争案件も多く受任しているが、その大部分は訴訟を多く行う弁護士が所属するグループが遂行している。私は訴訟関係はほとんど扱わないグループに属しているので、民事事件で法廷に立つことは現在はない。
昨年から所属弁護士会の方針で、国選事件、当番弁護、クレサラ法律相談(いわゆる多重債務者向けの法律相談)などの一定の公的活動を年一回は受けることが義務化された。これらは、一応報酬が出る仕事であるが、その額は非常に安いため、よほど省力化しないと持ち出しとなる場合が多い。したがって半ばボランティアとして行われているのが実態である。
私は国選事件については、義務化される前から毎年一度は受任するようにしていた。義務化されるボランティアとはもはや形容矛盾ではないかと思うのだが、みな弁護士会の取り決めに従っている。
今回は、弁護士会より割り当て通知が来てしまったため、忙しい時期であるにもかかわらず受任した。
事案の概要はここで記すことはしないが、執行猶予中の同種事案(薬物)での起訴であり、実刑は免れ得ないケースであった。被告人は再度の執行猶予を望んでいる。仮に執行猶予がついた場合、今後の監督をさせるため、親族に証言してもらい、本人の申し出もあって反省の意味を込めてドナー登録をするなど社会に貢献することをアピールした。
当日、予期しなかった常習性についての冒頭陳述、検察官立証が行われた。常習だったことを示す証拠はなかったし、本人も否定していたので、このような立証が行われた以上、反論せねばならない。即座に常習性を否定する被告人質問を行った。反対尋問でも崩れず、感触としては常習性は否定されたように思われたのだが、判決は実刑(2年求刑で1年6月)であった。もっとも判決文中では常習性についての言及はなし。即日判決というのは少ないが、このように即日で実刑判決が下されることもある。
裁判所の薬物犯罪に対する態度は総じて厳しい。それは、再犯の危険が極めて高いことがよくわかっているためであろう。
久しぶりに法廷に立つと身が引き締まる思いがするものだ、と思いながら帰途に着く。事務所に帰りつき、めったに着用しないバッジを外すと、書類の束が目に入り、急速に視界が狭まったような眩暈を感じた。
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