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2001年09月17日(月) 渉外弁護士とは?


今回は掲示板でのお問い合わせがあったので、文体を変えてご説明します。

渉外弁護士の仕事や生活の実態については、余り知られておらず、イメージが先行してしまっているようですね。あまり渉外弁護士の方でHPを開設されておられる方が少ないためでしょうか。

いずれコラムを設けようと思ってはいるので、ここでは簡単に説明させていただきます。

最初に、渉外弁護士という言葉は、ここでは敢えて用いないことにします。
というのは、「渉外」と一口に言っても、その事務所の規模、形態、扱う仕事の性質などにより、様々な仕事のやり方があり、一般化するのは不可能に近いためです。英語を使う仕事の割合が相当多いというところを「渉外」と呼ぶのだと思いますが、定義として曖昧です。また、他の事務所の状況を本当によく知っているわけではないので、申し訳ないのですが、ここでは、私の所属している事務所のアソシエイトを念頭においてお話しさせてください。

(1)仕事の時間帯

まず、仕事の時間帯ですが、日によって朝7時ころに事務所に来る場合もあれば、午前10時ころに来る場合もあります。極端な場合には、正午を回ってから出勤という場合もあります。

帰る時間もまちまちです。私の自己最高記録は午後5時帰宅というのがあります。もっともこれは非常に例外的で、通常は午後11時から12時30分くらいがもっとも多いと思います。

非常に忙しいときは、週に2回ほど1時、2時を回ることもあります。もっとも酷い場合には、完全徹夜ということもなくはありません。さすがにその場合には、翌日の午後6時ころには帰宅します。
一般化はできませんが、やはり〆切のあるお仕事なので、出版社等と同じく、勤務の時間帯が不規則になりがちです。

(2)仕事の内容

仕事の内容は、以前の日記にも書いたと思いますが、企業法務が中心で、個人相手の仕事は国選や当番を除き、ほとんど行っていません。具体的には、各種契約書(和文・英文)のドラフティング・法的検討、会社の設立・再編や労働法関係などのジェネラル・コーポレイト、銀行・証券会社、保険会社を初めとする金融機関のレギュレーションの関係の助言、国内の訴訟、倒産法制関連の作業、ファイナンス(シンジケートローン、証券化、流動化なども含みます)、税務関係の助言、国内外の証券発行等々広汎に及びます。いずれをとっても一口では説明できませんし、なかなかイメージもしにくいかと思います。

(3)職業的魅力等

職業的魅力も、扱っている仕事により、また個人のポリシーにより様々なものがあると思います。

私個人は、体系的な法的知識がないと構成できない取引を、法的に整理して、依頼者の求めている効果を実現させるところに魅力を感じます。特に、日本で従来行われていない全く新しい取引について、法的問題を徹底的に突き詰め、問題がないような形に整理し、これを契約書などの形に完成させるというのが魅力です。だれも考えた事のないような問題を考えるというのは、困難が伴いますが、やりがいはあります。非常に幸運だと思うのは、そのような種類の仕事や相談が多く持ち込まれる事務所に所属できたということです。新聞に出るような案件も扱っていますので、これも結果論ですが魅力かもしれません。

逆に辛い所は、といわれると、これも個人的な話になってしまうと思いますが、自由になる時間が比較的少ないことです。それでも、私はできる限り土日は仕事をしないようにしていますので、そんなに辛くはありません。また、余りにも多くの仕事を抱えてしまうと、やはりストレスを感じます。寝ていても仕事のことが頭から離れないこともあります。夢の中で仕事をしているとかも良くあります。貴重な人生の切り売りをしているような気がして、むなしくなることもなくはないです。特に文章を書きたいと思っているときには、なおさらです。

それでも仕事を辞めないのは、やはり魅力があるからだと思います。仕事が私にとって魅力がなくなり、自分にとってプラスにならないと思えば、いつでも辞める覚悟はあります。

(4)その他

ちなみに、掲示板に書き込まれた方が親切にご説明くださったようですが、大手渉外事務所の初任給とされている金額はまあそんなものなのかもしれません。しかし、東大以外は入るのが非常に困難、という件については、そんなことはないとお答えしておきます。私自身文学部出身ですが、法学部以外の出身者も意外に多いですしね。

まずはこんな所で。







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