2001年06月18日(月) |
日々雑感:株主総会リハーサルを巡って |
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入梅すると、世の中は株主総会の季節になり、弁護士は、上場企業等の定時株主総会のために駆り出される。私も例に漏れず、明日、株主総会のリハーサルの演出を行う。今日はその準備でかなりの時間を費やした。
株主総会で、株主から聞かれたことに的確に対処するために、前もって準備をしておくのは上場会社においては常識である。弁護士は、このリハーサルで、一般の株主の考えるような質問ばかりではなく、総会屋がやるような嫌がらせに近い荒れた総会を演出する。
すなわち、 (1)恫喝したり、 (2)嫌がらせに近い議案の修正動議を提出したり、 (3)手続論や法律論で議事進行を混乱させたり、 (4)法律的に難しい論点をついて議長の采配を妨害したり、 (5)インテリヤクザばりに会計処理の曖昧な点について鋭く分析をして矢継ぎ早に質問したり、 (6)業績を分析し、多角的に経営の弱い部分をついて、取締役の責任を追及したりなど、凡そ総会屋がやるような手口で、問答及び議事のリハーサルを一通り行う。これが弁護士の期待される役割である。
議長を務める社長を初めとした経営陣及びそれを支えるスタッフに、これらの質問と「荒れる」総会を経験させる事で、定時総会の十分な準備をさせるのが目的である。
この準備を事前に十分行う事で、一般株主に対して会社側で十分な回答をする以外にも、巧みに取り入って利益の供与を受けようとする総会屋に付け入る隙を与えないようにすることができる。総会屋の跳梁跋扈が目立たなくなったのは最近のことであり、未だその危険は完全には去っていない。古い体質の企業では、完全に拭い去れないのか、時折、利益供与などの総会屋との癒着が報道されている。
勿論当日も弁護士が参加し、全面的なバックアップを行う。その場での適切な対処法を助言するためである。このように弁護士が総会の運営に携われば、彼らに対して付け入る隙を与えずに、合法的かつ的確な株主総会運営を行うことが出来る。
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明日は、声を嗄らして恫喝をするのである。 上場企業の社長を怒鳴りつける体験など、めったにできるものではないが、思うより体力を消耗するものだ。すでに3回目なので、緊張するはずもないが、やはり気疲れはする。
窓の外の空は暗い。深夜のオフィスの灯りもそろそろ届かない時間だ。 そろそろ睡眠をとるべきだろう。
アゴタクリストフを巡る二重化の議論(仮説)は、また今度に。
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