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2001年05月23日(水) 東京リーガルマインド対アドビシステムズ他2社

ニュースになったので既にご存知かもしれないが、あえてここにも記しておく。

司法試験予備校として有名な東京リーガルマインド(LEC。筆者も講座を受講した事がある)が、高田馬場西校において(筆者が受講したのは正にここである。)コンピューターソフトを不正にコピーして使用していた問題をめぐり、米国の大手ソフトメーカー3社が約1億1400万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁はLECに計約8500万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

法律予備校が、法律違反を組織的にやるということ自体、一般の感覚からすれば何ともしまらない話ではある。Incognitoと呼ばれるソフトウェアを用いて、同一シリアルナンバーでもLAN上に存在できるような仕掛をしていたそうだ。

被告側の主張は、その後、不正使用を止め、正規に購入した製品をインストールし、使用していたのであり、ライセンス契約は将来のみならず、一度インストールする事により過去にも遡って損害を治癒するとの主張であった。

組織的なソフト不正コピーで損害額を算定した判決は初めてのことであり、損害額の算定についての判断は注目に値する。

本判決は、損害額を「弁論の全趣旨」から小売価格としている。
これは、使用者が受けた利益を損害額と推定するという著作権法第114条の適用の結果と考えられる。しかし、小売価格の1.5倍の損害額を主張した原告の請求は退けられた。

ここに、疑問がある。ライセンス料自体は、小売価格よりも低いはず(すなわち流通過程に消える部分があるので、ソフト会社に入るライセンス料は実質上かなり低いはず)であるので、被告は、「被告が受けた利益の額」を争う方法が考えられたと思われる。なぜ被告はこの点を争わなかったのだろうか?(「弁論の全趣旨」から判断されているところをみると、争っていないのであろう)

興味深い判決なので、是非、ご一読を。







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