|
およそコトバを商売にして飯を食っている人間にとって、コトバへのこだわりは尋常でないものがあるようだ。
例えば私はコトバを売って暮らしている人間だが、より普遍的なコトバをより正確に理解し、その背後にある概念だけでなくその成立過程、最新の用いられ方を吟味しなければならない。コトバの定義だけを追って1日を費やしてしまうことだって少なからずある。コトバの定義のために数十の文献を調査することもしばしばだ。
そのコトバ一つで、一つの会社の運命が決まり、そのコトバ一つで誰かの命の刻限が決まる。そんな業界で何とか毎日をやりすごしている。
この日記は、そんな業界の人間がブンガクという名の別のコトバ売りの業界との間にある深くて暗い溝を直視し、その溝の底辺でもがきつづけているさまを描写するために書かれるものである。
ご挨拶にかえて。2001年2月6日
|