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1997年03月18日(火) 祝!東京大学文学部仏文学科卒業確定!

祝!東京大学文学部仏文学科卒業確定!

同じく卒業確定した友人と話していたのだが、これからの日本の経済状況は5年から十年の間に激しく変化するのではないだろうか。政府が最後の切り札として場に出そうとしているカードは「日本版ビッグバン」であるが、その骨子が経済界、特に金融業界の規制緩和にあるのは周知の通りである。

その某都銀に就職が内定している友人との一致した結論は、イギリスが80年後半に進めていた規制緩和は結局海外資本の急激な流入を呼び、国内資本が駆逐されて、金融機関(特に銀行)の看板の掛け替えという事態を招いた(これをウインブルドン現象という。ウインブルドンでイギリス国内の選手がほとんど活躍しないことからこう名付けられたらしい)。

日本政府の対応としては次の二通りが考えられる。一.イギリスの轍を踏まないように消極的な規制緩和にとどめて、結局形式的な名前ばかりのビッグバンにしてしまうか、二.景気回復と日本経済の根本的な建て直しを期待して、大がかりな規制緩和を行う。この前者を選択した場合、おそらくその場合は持ち株会社は認められるものの、連結納税制度は不採用となり、「なまぬるい規制緩和」との印象を与え、外国資本の流入といった現象すら起きないであろう。現状とほとんど変わらないのであれば、日本の金融市場は魅力がないのである。(だいたい参入するメリットがそれほどない以上、銀行だって営利を目的としているのだからこれは当然の結果である。)政府が考えるように金融業界再編の契機となるかもしれないとの期待は甘すぎるであろう。第二の選択。この荒療治を導入した場合、その具体的な手法は、デリバティブ解禁や、金融商品の自由化、証券業務の自由化、生保損保業務の自由化、などによる銀行業界・保険業界・証券業界の統一・再編成や、持ち株会社・連結納税制度の導入・法制化、独占禁止法の強化・見直し、公正取引委員会の権限強化・外国資本導入の際の様々な障壁の除去作業などなどの方法によるものになるだろうが、既成の金融機関の大半がイギリスにおけるように外国資本の参加に入る事態にもなりかねない。それでもイギリスはイギリス人の国内雇用の維持のためにそれを甘受し、国際的な競争力と引き替えに自国資本の金融業界を手放したのだ。日本の現状では、それを甘受するほどの切迫感は未だにないし、相変わらず大蔵省や日銀は国民にこのままの状況でも「緩やかな景気回復基調」にあるのだから大丈夫、との認識を植え付けようとしている。しかし、現状はかなり悪化しているし、アメリカに次いで、イギリス、ヨーロッパ共同体各国が国際的競争力を備えたいわば次世代の金融状況に適合させようと苦しい努力を続けているのに、日本だけがなにもしないで行くといずれ海外資本の浸食を例の「外圧」とかで押しつけられてこちらがイニシアティヴをとれないまま次々と搾取されていくのが落ちだろうと思われる。

水道橋の駅の明かりが映る神田川を茫漠と眺めながら、僕らはしばらくこの国に生きることの難しさを考えていた。おそらく。







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