JIGOKUNOMISOGURA

2010年01月06日(水) なんとなくリハビリ。

※パラレル注意。高校生。




 365日のうち、恐らく360日は喧嘩をしている。

 そのしていない5日は何かというと、年間を通じて会わない日がそれくらいはあるからだ。


 
 だから。
「あんたたちまた喧嘩してるの」
 という言葉は正確には正しくない。
 顔を見ていて喧嘩をしていないときがないからだ。
 けれど勿論、賢明なサンジはナミに向かってそんなことは言わない。
 そしてその喧嘩しかしない相手と、向かい合って学食を食べている現実をナミも突っ込まない。
 顔を見れば怒鳴りあいしかしないし、気分が乗れば殴りあいもする。ちなみに今もお互い、それなりに怪我持ちだ。喧嘩の間に腹が減ったので、小休止で飯を食っているのだろう。
 そしてそれなりに腹が満ちれば気分も落ち着く。喧嘩の理由も忘れているに決まっている。
 それでもむっつりと丼飯を掻き込む二人を見ながら、一番安い学食メニューすうどん120円なり、に葱をぶちこみながらナミが呆れた息を吐く。
 二人に介入するのがどれだけあほらしいかナミは熟知しているので、今更、喧嘩の原因を聞くような親切な真似はしない。二人が何か言ってくれば聞いてやってもいいが、無料で聞いてやるほど優しくはない。
「で、どっちが勝ったの?」
 それでも面白いのでそれなりに波風を立たせるのは忘れない。
「「おれ」」
 案の定、自信満々の声がステレオでかぶり、即座に「「なにおう!!」」とがたがたち椅子を蹴散らす勢いで、お互いの胸倉を掴むのを横目で見た。
 こんな面倒な幼馴染、これくらいの楽しみがないとやっていられない。
「続きするなら、外でやってよねー」
 けれど優雅な昼食時間を費やすほどではない。あっさりと言い捨てれば、頭に血が上った二人は「今度こそ決着つけたらあ!」や「ああ! いつおまえがおれに勝ったよ!?」などのがなり声を立てながら、仲良く校庭へと連れ立っている。あれで人の迷惑をかけない場所を知っている。
 本当に迷惑なやつらだと思う。
「飽きないわよねえ…17年も」
 自分とルフィとウソップと。
 ゾロとサンジで幼馴染だから17年の付き合いだ。
 そして17年間。毎日二人はきっちりと喧嘩している。
 一度、サンジに「喧嘩しない日ってないの?」と聞いたことかある。
 そのときサンジは、想像したこともないことを聞かれた。という顔をした。
 心底。心底、びっくりした顔をしたのだ。
 それを見たとき。
 ああ。こういう関係もあるのかもねー。
 とナミはなんとなく悟った。二人に喧嘩をするな。と言う事は、サンジに料理を辞めろとか、ゾロに剣道を辞めろとか、もっと言ってしまえば、食うなとか、寝るなとかを強制するレベルなのだなと思ったからだ。
 17年、生きてきて二人は17年間喧嘩をしているし、17年、仲直りをしたことはない。
 けれど疲れれば一緒にメシを食べるし、並んで休憩もしている。

 それは愛の言葉のように熱烈だと思う。

 おー。今日もやってるぞー。と学校内でかなり有名になっている二人の喧嘩は、すっかり学校の名物だ。
 あちこちで無責任な野次が飛び交う中、いっとき、どちらが勝つかという賭けの胴元だったナミは、本人ばかりは生真面目な喧嘩を繰り返す二人を何の感慨もなく見守る。
(因みにどちらにも勝負がつかないのは判りきっているので、胴元の一人勝ちで〆た後、とっとと撤退した)。

 きっとあと、何十年たっても、二人は仲直りもせず喧嘩ばかりなのだろう。

 けれどきっと、最後まで一緒なのもこの二人なのだ。
 きっと、そんな気がした。

 それぐらいになったら、そろそろ仲直りしなさいよと。と何十年ぶりかの仲裁をしてやってもいいなと、葱だらけの素うどんに七味を振りかけながら、ナミはぼんやり思った。

2010.1.6



お題:「学ばなくなったら、終わりでしょう」


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yanagisawa