『南欧東花房』,『なすび』

 『ご近所』のAさんには6月の始めにメールをもらってすぐ「美味しいものでも食べましょう」と言われて『ご近所さん』には珍しい積極性、と思っていた。
しかし今日まで日程が合わなかったり、メールも全く面白くないのでなんだかなあ、とも思っていた。

「いや、意外にかっこいいかもよ。メールがつまらないのはルックスに自信があるからじゃない?」などという人もいて、会ってみた。
見た目は普通、言うことはメールと同じサラリーマンだった。

「イタリアンでも行きますか?ここはね、美味しいです。3本の指に入りますよ」とAさんが言って小田急のエレベータに乗る。
そんなすごい店が小田急デパートに入っているのか、と思ったら『東花房』だった。

「あ、知ってました?」とAさん。
「はい。いろんなところにありますよね」
「そうでしたか。美味しいですよね」
「う、そうです…ね?」

二人で「ちりめんじゃこと山いもの明太子和えスパゲティ」。
Aさんはこの後仕事に戻るのでソフトドリンク、私はビール。
「美味しいね」とAさん。私はしょっぱくて全然駄目。社食のスパゲティとたいして変らない。
Aさんのキーワードは「グルメ」だったが…。

仕事の話、映画の話など。Aさんは『デイ・アフター・トゥモロー』が良かったとか『世界の中心で、愛をさけぶ』が見たいとか。

Aさんが「もう行かなきゃ」ということで私は「ご馳走様です」と言って席を立って、トイレから戻って来たら「最初は割り勘でいいですか?えーっと、1,400円でいいです」。
「あ、はい。1,400円」
「次はご馳走しますから。エヘヘへ」
次などない。別に男が払うべきだとは思わない。
ご馳走してくれると思っていた私が間違っていた。

ご馳走してもらっていたら、こうは言えない。あー、つまらなかった!不味かった!
やっぱり誘われてついて行くんじゃ駄目だ。

 『なすび』で飲み直す。先日『プレイ・ウィズアウト・ワーズ』に誘ってくれたKさんが来てお礼。ドラマや映画や文学の話。
先ほどまでの顛末を話したら「かっこよくないし、つまんないし、せこいんだ。最悪だね」と笑われる。
Aさんも私に対して同じように思っているかもしれないが。

 先週末は楽しかったのに、今日はなんてつまんねーんだ!と美しい月に向かって心の中で叫びながら帰る。
ところが『MARIBAR BBS』を見て気分一新。
愛するバンド『ナインアンダー』ジャブロ君の書き込みがあってムカムカからウキウキへ。
明日は約束があってライヴに行けない。悩ましい、でも嬉しい。単純だね。
2004年07月06日(火)

抱茎亭日乗 / エムサク

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