あの人が結婚する。 誰よりもまだまだ結婚はしないと言っていたあの人が。 もう恋愛感情はない。と思う。 あるのは、恋愛感情とか超越した何か。 漠然としていて、言葉にはできないけれど。
あの人は、あたしの中に在る一番奥の扉に手を伸ばしてくれた。 そうして、本当にあたしのためだけに泣いてくれた。唯一。 それでもあたしは扉を開けるのを踏みとどまった。 理由はきっとたくさんあった。 あの時は、どうしても、開ける事が出来なかった。
今となってはもう、想い出すにも遠く、どうでもいい事なのかも知れない。 あの人の美しい手は、もう二度と扉に手をかける事もないのだから。
あたしはとても真っ当な顔で、おめでとうと言えていたかしら。
at「bestfriend」
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