| 2001年05月23日(水) |
振り返って知ると言う事 |
とても長く平坦な道を歩いていた。 誰と約束をした訳でも、恋人を連れ去られる訳でも 無いけれど、まだ一度も振り返らずに。 それは本当に気が遠くなりそうな程長い道だった。
まるで、世界中の音が大きな穴に吸い込まれたかのように あたりはとても静かだ。 道路を踏む音だけが妙に響く。 突然、何かの羽音が聞こえた気がした。 近いようでもあったし、遠いようでもあった。
僕は弾かれたように、振り向く。 何かが飛んでいるようだ。 何か、、、人? 背中には白い、、、羽? それはとても軽やかに、踊っているように宙を舞っていた。 そしてそれは何故か僕の様に見える。 僕は静かに道を戻る。 でも、戻れど戻れど距離が近づいている様子はない。
「縮まらないよ」 驚いて辺りを見回す。 足元に15cm程の鼠が一匹。 彼はもう一度「縮まらないよ」と繰り返す。 その顔は人のようにも見える。
「距離は縮まらない。それはある種宿命的なモノなんだ。」 「宿命的、、、。」僕はただ繰り返す。 「そんなに羨ましい眼で見ないでも、全てはきみ次第なんだ。」 「僕次第?それは、」僕が全て言い終わる前に、鼠は茂みの中へ消えた。
恐る恐る振り向いた背中には、 麻紐のようなモノで縛られ、奇妙に歪んだ羽。 気が付くと、右手にはナイフ。
この道の先に、僕の姿はまだ無い。 振り返る。 「僕次第、、、。」繰り返す。 それから?
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