おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ
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2007年03月21日(水) あの惨劇から正に10周年……

トリビアブームが過ぎ去った間もない昨今、シュールシュトレミングをご存知の人は多いでしょう。そう、スウェーデン特産の世界一臭い発酵食品です。

 じつはアイルランドに行く寸前までわたしんちには今にも爆発せんばかりに膨張したシュールシュトレミングの缶がありました。
 なんでそんなもんがあったかというと、まいどおなじみの道晴が当時はスウェーデンに本社がある外資企業に働いとって、本社への出張土産にくれたわけです。「これの臭いは半端や無い。キャンプとか屋外で飲むチャンスがあるときに空けろ」といって (あれは本場でもガーデンパーティーとかオープンスペースで食うもんらしい)

 そして今を去ること正に10年前の春分の日。大学院で花見をするというので我々OBも呼ばれたわけです。
 うちの院の教授は包丁自慢の方でして、このときも土筆の卵とじ・たらの芽のてんぷらなどなど春の山菜の料理を山ほど作っていただいて、一同舌鼓を打っていたわけです。一通り満喫したところで「チャンス到来」と思ってしまったんですなそのときは。おもむろにかばんからその缶を取り出してしまったわけです。

 当時はまだそれほど有名じゃなかったんですが、ひとりだけ、海外旅行マニアで、当時JTBに就職していたヤツが缶を見るなりぎゃっとわめいて逃げ出しました。「まさか日本にまでこいつに追ってこられるとは……」とおびえる彼を尻目に興味津々の院生仲間に取り囲まれたわしが缶切りを突き刺したわけです。
 
 ぶしゅー!!

 スチール缶の圧力限界までに高められた発酵ガスが中の汁とともに一気に飛び散る!
 すさまじい臭気!臭いの臭くないのってもうみんな俺を取り残して半径5m以上に蜘蛛の子をちらすように逃げた!!なんちゅうか運子の臭さにくさやの臭気を掛け合わせてそれを100万倍に圧縮して固形化したもので鼻をぶん殴られたようなにおいの暴力。
 しゃがんでいたワシは逃げようも無く涙ぼろぼろこぼしながら何とかふたを開けたわけです。
 結局食したのは3.4人ほど。
 はっきりいって味自体は決して悪くない。サーディーンを濃厚にした味。ただし舌の粘膜が毒ガスにコーティングされていて味蕾が正常に機能しない。結局二匹以上食す勇気のあるものは俺含めて一人もおらず、残った魚は公害となることを防ぐため、あたかもモンティパイソンのギャグ兵器のごとく地中深くうめて処分されたのでありました。

 私は一生忘れないでしょう。春分の日、桜の木の下で日本の最高学府を極めた若者たちが立った一個のスチール缶に恐れて右往左往と逃げ惑ったあの日のことを。


べっきぃ