おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ
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2006年06月26日(月) 佐々木譲『幕臣たちと技術立国』読了

 電車読書で面白すぎて乗り換え損ねるほど。
 著者はおなじみ佐々木譲。エンジニア上がりの作家としては谷甲州と双璧といってもよかろう。エンジニア出身の作家には物を作る段取りを理解して、小説の一描写にも背景の緻密な設計が感じられる。谷甲州の『航空宇宙軍史』の連作短編にも一作一作まるで北京拷鴨の一切れのように鳥1羽の存在が感じられた。
 で、本作は近年著者がこだわっている幕末の技術者達にスポットライトを当てた列伝。
 開国以前に英語を学び、反射炉を製造して新式銃の製造に取り組み、ペリーに対抗するため品川砲台を築き、難破したロシア船員達に代船を作ることで戸田型洋式船の建造法をマスターすると、開国前後に八面六臂の活躍をした挙句壮絶な過労死を遂げた江川太郎左衛門英龍。
 モリソン号打ち払いを実行し、その後はエンジニアとしての道を歩みながら勝海舟と対立し、最後は幕府軍艦開陽の機関長を務めてその沈没後は箱館で戦死した中島三郎助。
 間宮林蔵の薫陶を受け蝦夷地開拓を若くして志し、オランダ留学を成した後も旧幕府軍の中心となして箱館戦争を指導し、降伏後は外交官として活躍した榎本武揚。
 彼らを通じて明治の文明開化にいたるまでの江戸期日本の技術の土台を作った人々を鮮やかに描き出している。
 『風雲児たち』の愛読者なら必読の一冊。
 ただ、この著者、徹底して「政治屋」勝海舟嫌いなんだよね。「同時代に生まれてたら嫌いになっていただろう」と自分でもいっているし。たしかに海舟の技術力って当時の技術者の中で最低水準なんだけどね


べっきぃ