おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ
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| 2005年07月05日(火) |
『フォール オブ ケベック』読了 |
昭和20年8月某日。どこぞのドヤ街。まもなく日本が降伏すると聞きつけて怪しげな奇形児が何人も集まってくる。主人公(俺じゃない)の家はシャム双生児やらなんやらがごろごろしているフリークスな一族。家の地下に異次元への入り口があるらしい。米兵が来れば自分らは生きておられることはあるまいと考え、最後にぱっと一花咲かすべく、トラックを奪って某所に殴り込みをかけにいく……というところで目が覚めた。いかにも初期石川賢的テイストにみなぎった面白そうな話だったのにここで目を覚ましたのは残念。果たして彼らはどこに何をしに出かけるところだったのか。
で、夢とは全く関係無しに上述書 作者は全く無名の新人。しかも50代と思われる。 こんな人の小説がこの出版不況の折にいきなり出版されるのも不思議だが、テーマもまたこんなマイナーなものをよく出してくれた。(とおもったら文芸社って自費出版の会社なのね) 舞台はフレンチ・インディアン戦争(1756〜1763)の最大の攻防戦・フランス植民地軍が立て籠もるカナダの首都・ケベック要塞をイギリス陸海軍が攻略する話で、主人公はこの時の英国軍司令官ウルフ将軍。いや名前と略歴しか知らなかったぞこんな人。名称というよりむしろ奇将というべき人物で部下の意見も聞かずに矢鱈試行錯誤を繰り返して評判も散々。ただ兵士への扱いが手厚いので人気はあるという人物。この男の生涯最後・かつ最大の晴れ舞台。 文体は重厚とか華麗というわけでもなく、シャープシリーズのように今流行の泥濘の味・鉄錆の臭いがするほどのトリビアルな文体ではないが、丁寧に、かつ平明に書こうとされているので好感が持てる。軍事用語の使用も的確で状況説明も分かりやすいので頭の中で地図を書いて作戦の遂行も楽しんで終える。佐藤賢一の一連の小説のような装飾過剰なところもなく、そこそこ秀作といえるのではなかろうか。
今日の一行知識 ○群馬には群馬県群馬郡群馬町なる地名が実在する。
べっきぃ
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