おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ
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2005年01月08日(土) 吉村昭『海の祭礼』読了

本書の主人公は幕末、日本を夢見て日本語教師になるために密航したネイティブ系アメリカ人と、彼に英語を学び幕末の動乱の中活躍し、明治維新の成立とともに燃え尽きるようにこの世を去った通訳の二人。
 著者は日本人通訳を主人公に「黒船」なる作品を書いているが、この作品では通訳という職業のもつ機械的弐言葉を伝えねばならない悲しさが主要なテーマであるののに対し、本書ではむしろ異文化交流の真っ只中に立たされた主人公達の苦闘振りが中心に描かれている。時代のうねりの中、言葉という武器をもって時代の最先頭にたち、悪く言えば権力者達にすり減らされるように使われていった主人公の姿には悲哀がただよう。最も主人公の背負う悲哀は吉村作品に共通した臭いではあるのだが。


べっきぃ