日々是無常。(直リンク禁止)
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2006年03月02日(木) 招かれざる客 〜何か自分の50年後を見るような気がしたのは気のせいだと思いたい〜

事件です!ボス、事件であります!!

おちごとの終わり際に、ご近所の女性が困った様子でご来訪。処方箋持ってない上犬を連れてたんで、ああ、薬じゃないなとはすぐわかったんですが。

この女性、一人の道に迷ったおばあちゃんを拾った模様。んで、タクシーを呼んであげて欲しい、とのこと。
拾ったなんて言うとその辺に落ちてたみたいで失礼なんですが、このおばあちゃんが歩き回ってたかそうでなかったかの違い(実際はさんざん歩き回って道に迷った所を犬の散歩してたご近所さんに声かけたらしい)なんで、むしろその女性がおばあちゃんにタクシーのように拾われたみたいだなあと思ったり。
んで話を聞くと、このおばあちゃん、知り合いの所を尋ねようとしたら道がわからなくて迷ってしまった挙げ句帰れなくなった、とのこと。まあお年寄りに限らず多少の方向音痴ならいっぺんくらいやらかしそうな失敗です。


駄菓子菓子………。
ウチの薬局の事務さんがおばあちゃんに『御宅はどちらですか?』と聞いたら、「東神奈川です。」とハッキリとお返事が。
ちょっと待て。東神奈川(JRの京浜東北線と横浜線が通ってる駅)はココから電車で20分以上の距離。しかもウチの薬局住宅街に埋もれてるから、最寄り駅まで歩いて15分かかる。多分このおばーちゃんが歩くとなると、駅まで歩くだけで30分はかかると思う。
その東神奈川からはるばるココまで!?いやありえない。だってこのおばあちゃん、財布持ってないし。(本人がそう言ってた。んで実際その通りと後に判明する)
トドメにこのおばあちゃんの名前が、ウチの常連の患者と同姓同名でした。
だーーーーややこしい!!…ひょっとして、尋ねた知り合いってその患者の事で、このおばあちゃん間違って知り合いの名前言っちゃったんか??

いよいよ聞いてるこっちも話がわからなくなって、そうこういってる間に日が暮れてきたし、いっそ警察呼ぼうかとかその同姓同名の患者に連絡とってみようかとか案が出るもまとまらない。


でも本人の話からすると、「ちょっとそこまでだから、道わかると思ってた。」ってな具合の事しか見えてこない。んでその他の呟きを断片的につないでみると………。
「住所はわからない。電話番号も知らない。」だの
「家に電話すると迷惑がかかるから…。」だの
「家には使用人の人が4人ほど…。」だの
「ちょっとそこまでだから、お財布も保険証も老人手帳(コレは身元を確認しようと思って試しに持ってるかどうか聞いてみた)も持ってこなかった。」だの。
二言目には「皆さんにご迷惑をおかけして……。」と申し訳なさ気。



…おおよその見当はついて来た。
このおばあちゃん、一人で自活出来る健康状態じゃない。多分認知症の初期段階って所だろう。ぶっちゃけ介護する誰かがいないと生きていけない状態だ。電話するとどうたらってくだりは、過去に似たようなトラブルがあったと思われるし、使用人というのは多分ヘルパーの事だろう。モノホンの使用人を4人も雇えるような金持ちのおばあちゃんなら、そもそも一人でふらふらとどこへでも行けるはずがない。おそらくヘルパーがちょっと目を離した隙に出てきちまったんだろう。財布がないって事は、電車は少なくとも使ってない。そもそもちょっとそこへ出かけるだけでこの状態のおばあちゃんが切符買って電車に乗ってきちんと目的地に辿り着けるかは相当に怪しいもんだ。
だとすると、東神奈川ってのは自宅で、今はこの辺の老人ホームとかに住んでると考えるのが妥当だろう。それなら使用人4人どうたらってのも含めてつじつまが合う。

ふと。このおばあちゃん、財布は無いと言ってたが紙袋を一つ持っている。…これに身元を確認出来る物は入ってないか!?ちょっと失敬して中身を調べる。出て来たのは…。
…手ぬぐい。ダメだ。
…着替えと思われる洋服。コレ洗濯してなさ気なんですが。
…帽子。子供じゃねえから名前も住所も書いてないよ。


…あった!あったよ!見付けただよ!!
食事の献立表。しかも何故か去年の12月の。
ダメじゃん…っていや、ダメじゃない!隅っこに小さく施設のものと思われる名前が。多分コレ老人ホームのメシの献立で、おばあちゃんはココから来たんだ!!
さっそくこの名前を頼りに104へピッポッパ(古典的表現)。電話番号確認!よっしゃ!さらに施設に電話。


謎は全て解けた!!
おめでとう自分!!よかったねおばーちゃん!!!


その後施設の人が迎えに来てくれて(蓋を開けてみたらその施設、うちとこから歩いて10分とかからない所だった模様)おばーちゃん無事に帰宅。んでわしらも遅れて帰路につく。


という訳で、途中から自分の職業をスッカリ忘れてしまった事件でありました。オレはいつから探偵に。



…しっかし、実際にこうして接触すると、こういうお年寄り(だけとは限らんが)を介護する側は相当にこたえるだろう。肉体的にも精神的にも。自力で動けない人の介抱もタイヘンだけど、なまじ足が丈夫で歩けたりすると、糸が切れた凧のようにどこへ行っちゃうかわかんないからこれはこれで厄介だとよくわかりましたとも。今回のおばーちゃんはまた、普通に歩くわ喋り方はしっかりしてるわ(ただし言ってる事は前述の通り支離滅裂)で、ぱっと見は矍鑠(『かくしゃく』ってこんな字なんだ…。)としてっからなお周りが混乱するのだな。少々ずれた見解の「人は見かけによらぬもの」かもしれん。


自分が死ぬ時は散り際よく死にたいモンです。やっぱ他人に迷惑かけずポックリが一番だよ。←そんなオチか。


緑川 志信 |MAILHomePage

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