つんつん日記
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最後の最後まで爆笑と涙に包まれNHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」が29日終わった。従来の朝ドラの枠組みを逸脱した実に不思議な作品だったように思う。美しい沖縄の自然、おばぁ(平良とみ)を筆頭とする巧みな人物造形、繊細なせりふが生む感動と、NHKらしくないギャグの数々など、見どころは多かった。だが最大の異色さは「朝ドラ史上最もアバウトなヒロイン恵里(国仲涼子)」(菅康弘プロデューサー)の存在なのだろう。
通常のドラマなら納得がいくように描かれる主人公の行動と動機の因果関係は極めて希薄。行動原理は「運命」や、自分でも「むちゃくちゃ」だと思う衝動であり、「純真」と表裏一体の「能天気さ」ともいえる。視聴者が抱く「いくら何でも……」という思いを代弁するかのように、真理亜(菅野美穂)が「突っ込み」を入れる。
そうした相対化の視点があったからこそ、単なるファンタジーに陥らず、リアリズムの重みからも離れた新しい魅力が生まれたのではないか。
番組の平均視聴率は22%前後で、特別高いわけではない。しかし、回を重ねるごとに数字はじわじわ伸び、9月中旬には週平均26%を記録した。終盤の急展開にはやや物足りなさも残ったが、敵役の登場やヒロインに試練を与える事件の発生といった連続ドラマの定石を避け、徹底的に明るく自由に描ききった脚本・岡田恵和の物語は、これまでの朝ドラファンとは違った層にアピールした。
最終話では、主要メンバー全員が小浜島に集まる「ちゅらさん」らしい祝祭的なフィナーレとなった。沈滞気味のドラマ界にとって、この奔放さはよい刺激になったのではないか。(山内 浩司)
(Asahi.comから)
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