日々楽しく生きている。

2005年07月04日(月) キモチワルイ

今から8年前。


俺が20歳の時。


一緒に茨城に就職したAが、地元の海で死んだ。


夏に帰省して、地元の友達と海に行って、そのまま死んだ。


遺体は翌日の朝に浮かんできたという。



















彼が死んだというニュースが流れた夜、茨城で仲の良くなったBが俺に電話してきた。


俺とAとBは3人ともが青森生まれで、遠く離れた茨城の地で仲良くなる事に時間はかからなかった。






Bは電話で話しをする分には、まだAが死んだ事を知らないようだった。


俺は頭の片隅で、第六感で電話してきたか? と思った事を今でも覚えている。





『相坂、最近どう?』


『ああ、今学校行ってるんだ。介護の。』


『へー。』


『Bは何してるの?今でもあの会社で働いてるの?』


『うん。まあね。』



























『奴。死んだよ。』

























他愛もない話を続け、久しぶりに話す柔らかい感じをぶち破る、俺の容赦ない一声。


























そいつは驚き、これから青森まで来るという。




















































Bは携帯を握り締めた。






『相坂。』


『あ?』


『俺、Aの事、いつまでも忘れないよ。』


『・・・・ああ。そうだな。』


『俺、この携帯にAの住所とか生年月日とか、全部打ち込んだんだ。』


『・・・・は?』


『俺、いつまでも、いつまでもずっと忘れない。』







































正直、俺は引いた。





・・・・・・キモチワルイ・・・・・・とさえ思った。





ここまで固執する、死んだAにすがるようなBを、俺は異質の目で見ていた。























なぜ、そう思ったのか。


なぜ異質の目で見ていたのか。


8年前の俺は、自分でもなぜそう思ったのか分からなかった。


ただ本能だった。


本能でそう思った。


俺は冷たい人間なのか、それともどこかズレてるのかって自己嫌悪になった。























































あれから8年経った今。


実は今でも時々思い出す。


なぜあの時、そう思ったのかって。



















これから生きていくうち、きっと何度も友人の死を見ていく。


それをいちいち記録に残す事が¨キモチワルイ¨と思ったのかも知れない。


今の俺はそう思う。






あの時、キモチワルイと思った原因は、そこだったのかも知れないって。





























俺は、


俺がもし死んでも、キロクになんて残してくれなくたっていい。


時々思い出してくれるだけでいい。


あぁ、あんな奴がいたな、って。


キロクよりもキオクに残して欲しい。




























俺はきっとBに対して、あの時そう思ったんだなって。








8年前の自分が感じた¨キモチワルイ¨は、きっとそういう事だったんだなって。




















































俺はキオクの方がいい。





















いつか忘れる時がくるから。


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相坂 [MAIL] [HOMEPAGE]

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