『この仕事・・・・出来ません。俺には無理です。』
まだ俺が学生の時、こう漏らした人がいた。
一回目の施設実習を終えた直後の事だった。
『何で?』
『いや・・・あの便の匂いとかが・・・・耐えられないんです。』
『そうかぁ・・・。』
『相坂さんはどうするんです?やるんですか、この仕事?』
『さあ。やらないんじゃない?俺は社協に行きたいし。』
『便の匂いに耐えられました?』
『いや、無理だった。吐きそうになった。』
『ですよねー。』
『吐きそうになって当たり前だ。人間なら普通だ。誰だってあの匂いが好きな人なんていねえよ。』
『そうですよね・・・そうなんですよねぇ。・・・職員の人たちって好きなのかなぁ?あの匂い。』
『匂いに慣れてるんじゃない?』
『慣れるんですか!?はははは。』
『きっと慣れるんだよ、はははは。』
『ははははは。』
『ははははは。』
『・・・・・・・・・・・・・・なあ、もうちょっと続けてみようよ。』
『・・・・・・・・・・・・・・ええ、そうですね。きっと慣れると信じて。』
『そうだな。きっと俺らも慣れるよ。だから卒業まで一緒にやっていこう。』
早いものであれから5年が経った。
俺は社協に就職するつもりが、普通の介護職に就き、彼はどうしたのか分からない。
今となっては知る術もない。
『この仕事、やるつもりなの?』
俺は実習生に聞く。
『いや・・・分かりません。・・・・便の匂いが耐えられなくて・・・・。みんな言うんですけど、本当に慣れるんですか?』
俺は苦笑いしながら言う。
『ああ、慣れるよ。』
今頃どうしてるのかな?あいつ。
時々彼をふと思い出す。
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