介護という仕事をやる事に対して、激しい抵抗を感じていた。
それでも食っていく為には仕方がない。
何か仕事をしなければならない。
何かつっても、行くとこ行くとこ全て
『せっかく介護の資格があるんだから、うちではね〜。』
って断られるんだから、しょうがねえ。
こうなったら介護やってやるよ!!
意を決してその気になるが、探すとなると腰が引ける。
『・・・・・・く。とは言ったものの・・・・やっぱり・・・・』
心では探してたつもりだったが、体が拒否する。
そんな状態が1ヶ月くらい続いたある日の夕方。
夕刊広告に¨介護福祉士¨募集の記事があった。
『・・・・いってみるか。』
ここでダメならもうマジで介護は辞めよう。向いてないんだ。
デイケアで自分の居場所を見出し、仕事もそれなりにこなし
これから!!という時に内密で異動の命令が下る。
『痴呆治療病棟が出来る。12月には異動してもらいます。』
秋も深まってきた10月の事だった。
複雑だった。
せっかく介護福祉士としての自信が出てきたのに新しいとこに異動・・・。
そこでもしもまた、自分が介護に向いてないって事に気づかされたら・・・・。
だが上からの命令は絶対だ。
断る=辞職
悩んだ。
悩みぬいた。
答えは出ない。
彼女が入社したのはそんな時だった。
婦長に建物を案内されてる女性は¨須藤¨という社会福祉士だった。
何でも来週からこの職場で新入社員として働くらしい。
どっから情報を入手したのか、同僚の女性が俺に教えてくれた。
『ふーん。』
気のない返事をしたが、一目ぼれだった。
ドキドキだった。
・・・・・異動したくないな。
・・・・・一緒に働いてたいな。
だが、異動すると正社員に昇格というおいしい魅力があった。
今までの臨時だと給料が10万。
それが正社員になると給料はその2倍になる。
おいしすぎる・・・・・。
この女性と一緒に働きたいけど、給料アップは魅力だった。
結局、俺は異動を正式に受けた。
だが、この女性を何とか自分のモノにしたい。
自分の彼女にしてしまえば異動してからも会える!!
だって付き合ってるんだもん。普通に会えるじゃん。
猶予は2ヶ月。
その2ヶ月で奥手の俺が勝負に出る。
『須藤さんって彼氏いるの?』
『え?いませんよぉ。』
『え?マジで!?いないの!?可愛いのに!?』
『今までお付き合いした事ないです。』
『マジでー!?』
上玉だ!!!!!!
絶対に逃さねぇ!!!
絶対に俺のモノにしてやる!!!!
『須藤さんってタバコ吸うの?』
『いえ、吸いません。』
『あ、そうなんだぁ(^^)』
超上玉だ!!!!!!
何とかしてこの2ヶ月で俺の事を好きにさせないと。
『・・・・・・・・・・俺には時間がない・・・・・・・・・』
『え?』
『い、いや、何でもない。』
だが、この須藤という女性。
なかなか本心を言わない。
一ヶ月を過ぎ、何とか俺の事が好きになってきてるみたいだけど
なかなか好きって言わない。
俺も言えない。怖くて。
『時間がない・・・・・・・・・』
『それ、何の時間なんですか?』
『え?』
『結構言ってますよね。それ。』
『う、うそ?』
『最近特に言ってます。気づいてないんですか?』
焦りからか、知らないうちに呟いてるらしい。
この2ヶ月という短い時間で意中の女性をゲットしなければならないのだ。
俺にしてみれば半年は欲しいとこ。
それを3分の1の期間で実行しているのだ。
時間がない。なさすぎる。
ここで勝負に出る!!
『俺、12月に異動するんだ。』
『え?』
『新しく病棟出来るじゃないですか。そこに、ね。』
『・・・・・・・。』
『時間がないって言ってたのは、もう猶予がないんだ。』
『何のですか?』
・・・・・・・・・・・・気づけよ。
『君が好き。』
『え?』
『須藤さんの事が好きだよ。』
『・・・・・・・・・・・・。』
ダメか。
しょうがない。時間が無かったもんなぁ。もう少し熟成したかった。
『私も相坂さんの事が好きです。』
『・・・・うぇ?』
『何度も言わせないで。』
『ねえ、いつ頃から私の事好きだった?』
『あ?覚えてないなー。』
『うっそー。ひどーい。』
『うるへー。』
『あの時、時間がないってしょっちゅう言ってたよね。』
『あ?言ってたっけ?んな事。』
『覚えてないのー!?』
『全然。』
『うそでしょー!?』
ウソだよ。
ちゃんと覚えてる。
いつから好きだったか
何を言ったか
どうゆう場所でデートしたか
ちゃんと覚えてるよ。
忘れるわけがない。
俺が君と過ごした時間だから。
これからもな。
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