無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2002年12月30日(月) 迷える不惑/DVD『ウォーターボーイズ』ほか

 40歳である。
 オジサンになったなあ、というのは30歳のときに感じたことであるので、今さらトシ取ったって感慨はない。それよりもう、あと何年生きられるかなあ、と、つい、余命を考えて、できるだけキツイ仕事は避けよう、なんて考えたりしているのである。なんたって今の職場、今年1年だけで3人も過労で退職、入院してるんだから。
 今日だって、同僚は仕事してるんだけれども、「カンベンしてくれ、年末や元日まで仕事するのかよ」と休みを取っているのである。そんなにみんな死にたいのか。
 けれど私が決して仕事から逃げているわけではないことは付け加えておこう。こないだの日記にも書いたが、なんたって二日からはもう仕事なのだ。「働いてないでDVDばかり見てるんだろう」とは言わせんからな。誰が言ってるんだ。みんなか(^_^;)。
 まあ、これからもいきなり死なない程度にはがんばらせていただきますんで、何卒ごヒイキに。


 朝、広島の友人のH君から電話。
 「誕生日だろ?」
 よく覚えててくれたなあ、と嬉しくなる。私の方は人の誕生日をなかなか覚えられないタチで、何しろ父親の誕生日すらしょっちゅう忘れてる。しげも私の誕生日をしょっちゅう忘れて、「あんたの誕生日いつやったっけ?」と真顔で聞かれるのだが(ネタではなく事実である。マジで女房は天然なのである)、こういうところで夫婦似たくはない。
 「今、実家に帰ってるから、借りてたDVD、返しに行こうか? ついでにまた本を持って行くから」
 そう言えばDVD貸してた。こちらは数枚DVDを貸すだけで、彼からは10冊も20冊もマンガだのSFだの貰ってるのだから、毎度のことながらありがた過ぎるほどにありがたいことなんである。
 だいたいどこの世界にその価値を知っていながら早川の銀背やサンリオSF文庫をポンとくれるヤツがいるだろうか。なんだか友人には恵まれ過ぎてる気がする。

 友達が来るのは夕方になるので、それまでに博多駅の紀伊國屋を回って、本やDVDを買い込む。あとで気がついたが、そのときついでに何か土産を買っておけばよかった。つくづく不義理な人間であることよ。

 夕方4時、H君来訪。
 「持って来たぞ」と言いつつ出してくれたのが、いしかわじゅんの単行本がズラリ。『ちゃんどら』や『パンクドラゴン大全』『メンカー』など。うわあ、軒並み絶版本ではないか。このころのいしかわじゅん、一番勢いがあったよなあ。
 「いいのか貰って?」
 と恐る恐るH君を見上げるが、全く屈託がない。人間の器の違いを見せつけられる瞬間であるが、やっぱり私は遠慮なく貰っちゃうのである。これではしげの強欲を責められんなあ。
 中身は昔読んでたものばかりなのだが、ペラペラとページをめくりながら、やはりいしかわじゅんの絵は最初期の頃が好きだったなあと再確認。女の子の絵の書き方に変化が生じて(流行に乗ろうとして失敗)、つまんなくなってしまった。もっともいしかわじゅんの最高傑作『約束の地』は絵柄を変えてからの作品だけれど。
 たがみよしひさの『精霊紀行』上下巻も貰う。これも持ってんだけどな(^_^;)。この単行本も店頭ではすっかり見かけなくなってしまった。復刊……というよりは、何年、間が空いてもいから続編を書いてほしいくらいのシリーズだった。都筑道夫の『雪崩連太郎』シリーズにインスパイアされたと思しい日本版ゴースト・ストーリーなのだが、ホラーブームが起きる以前、80年代にこの手の作品を書いていたのはたがみさんくらいのものだったのである(つのだじろうは切り口が既にかなり古臭くなっていた)。

 礼と言ってはなんだが、H君に『プリンセスチュチュ』や『攻殻機動隊SAC』などを見せる。H君、どう感想を述べて言いかわからぬ様子。そりゃまあ、いきなり第1話の「花のワルツ!」のシーンを見せられりゃあ、絶句するしかなかろう。私も最初はそうだった(^_^;)。ともかく「なんだこれは?」なシーンの連続だものなあ。
 『千と千尋の神隠し』の予告編映像と本編映像を比較して見せながら、「どうだ? 赤いか?」と聞く。色弱な私には未だにその違いがよく分らんのである。「赤いでしょ?」と言われたらそんな気がしてくるが、映像を入れ替えて同じことを聞かれても「イエス」と言ってしまいそうな気がする。
 H君、「予告編を収録しなければ、気がつかれなかったんじゃないか?」と言う。まあ赤いと言ってもその程度だろう。やっぱりこの事件、裏に「仕掛け人」がいる気がしてならない。

 ご家族がいらっしゃるので、H君もあまり長居はできない。せいぜいウチにいたのは数時間か。独身時代はもちろんまる一日ウチで遊んでたものだったが。

 私より遥かに知識も見識もある彼が、自分のシュミを犠牲にしているのを見ていると、オタクってやっぱり結婚しないほうがいいよなあ、と思うこともある。けれど、もちろんそれを承知でH君は「家族」を作ることを選択したのである。幸せを全てオタク的見地で括っていいものではない。だからこんなモノイイは、ホントは避けるべきであろう。けれどやはり、家族とか、そういうもののほかに、「こういう生き方もあっていい」という価値観を示す人々がいてもいいのではないかとも思うのだ。私は『オトナ帝国』における「家族の絆」を、人と人を繋ぐシステムとして有効、とは考えたが、絶対、と考えている訳ではないのである。安易な家族主義が、個人の圧殺を引き起こしてしまう例とてあろう。
 ……念のために書いておくが、H君が別に自分の家庭を不満に思ってるわけではないので、そこは誤解なきように。彼の家庭は、夫婦喧嘩一つなく、昨今珍しいほどに円満である。人徳だよなあ。
 彼を見ていると、私はやっぱりしげに遠慮してるようでいて、実は結構好き勝手に生きてるのかもなあ、と思ってしまう。自分のシュミを貫いて行けば、たとえ自分の相方が相当なオタクであっても、どこかにすれちがいが生じるのは仕方がないことである。
 しげとのケンカはたいてい「お互いを顧みない」ことが原因でで起きる。でも私の場合、残りの人生ってたいしてないと思ってるから、どうしてもしげを無視して生き急いじゃうところがあるのだ。
 しげの存在は私の人生にとってなくてはならないものではあるが、かと言って
その全てではない。しげの要求に全て答えることは精神的にも体力的にも到底ムリな話なのだが、「全て」を求めるしげの強欲さが数々の齟齬を生むのである。……アンタね、しげの望み通りに行動しなきゃならないとなったら、毎日毎日、帰宅するたびに腰を捻って踊りながら「ハーイ、マぁイはに〜、待ってたかァい?! ボクは今日も君に胸がズッキュンズッキュン! 一瞬だって忘れてないぜベイベぇ〜! らぶらぶビーム!」とかやらねばならなくなるのである。……できるか(-_-;)。
 しげと付き合って、その命を縮めぬ者はまずおるまい。


 H君が帰ったあと、父からも誕生日の電話。しばらく散髪をしてないので、明日は必ず来るようにとのこと。いやそりゃ行きますけどね。
 姉から「もっと頻繁に顔を見せなさい」とお叱り。
 「だって、『正月、なんか予定あると?』って聞いても、『ない』ってしか言わんし」
 実際、「別に来んでいい」と言われちゃ、行けないじゃないの……と続けたかったのだが、そう言う間もなく、続けて姉に捲くし立てられる。
 「用事がなくても来ていいとよ! ああ見えてホントは寂しがっとうっちゃけん。そりゃ、姉ちゃんにお父さんば押しつけたっちゃ、全然かまわんばってん?」
 いや、押しつけてる気はないけど……結果としては押しつけてるなあ。まあ抗弁してもなんなので、明日顔を見せることを約束。しがらみで会うのは父も私も好きじゃないんだがなあ。


 DVD『ウォーターボーイズ』。
 映画自体も気に入ってたのだけれど、特典映像がスゴイ。メイキングがあるとか、コメンタリーがつくとか、そこまでは普通なのだけれど、登場キャラクターをフィーチャーしての短編を5本、新たに制作しているのですよ!
 まあ、出演者が若手ばかりでギャラが安かったからこそできたんだろうけれど、数あるDVDの中でも、これほど「おトク」感を得たものは近来にないと言っていい。

 『チェリーとスイカ』。
 矢口史靖(しのぶ)監督自らメガホンを取ったサイドストーリー。
 火事のせいでプールが使えなくなった唯野男子高校水泳部に救いの手を差し伸べた眼鏡っ娘トリオ、桜木女子高の伊丹弥生(秋定里穂)・中村由紀恵(土師友紀子)・小林久美(上野未来)、人呼んで、「チェリーズエンジェルス」の文化祭前の1日を描いたもの。監督もお気に入りだそうだが、私もお気に入りだぞ。
 本編映画では弥生ちゃんが一番目立っていたのだが、今回のサイドストーリーでのメインは久美ちゃんにシフト。この子、八百屋の娘だったのだな(もちろんこの話のために新たに付け加えられた設定であろう)。『ひみつの花園』の頃から矢口監督はちょっとヘンな女の子を描き続けているんだけれど、この子も相当ヘン。拾ったスイカ食っちゃうだけならともかく、友達にも食わせちゃうんだもんなあ。そんな女子高生おるかい(^_^;)。……で、三人とも食中毒で入院してやんの。よく文化祭に間にあったものだ。
 でもこういうヘンな女の子たちと言うのは見てて楽しい。どうも私は普通でない女の子に惹かれる悪い癖があるようである(今さら)。
 
 『鈴木のトラウマ』。
 本編の主役、鈴木智<スズキ>(妻夫木聡)の過去のトラウマ歴を辿る一編。監督は本編助監督の片島章三。
 文化祭当日、土壇場になってシンクロを披露することに躊躇を覚えた鈴木は、自分がこれまでいかに根性ナシであったかを回想する。
 小学生の頃は全くのカナヅチで女の子にバカにされていたとか、それはまだたいしたことないのだが、中学時代、不良に絡まれた彼女を見捨てて逃げたってのはちょっとシャレにならない。今になっていくら勇気を奮い起こしたからって、過去の罪が帳消しになったわけじゃない。絡まれた彼女は結局どうなったんだよ? あの状況じゃマワされたとしか思えんが。
 ドラマの主人公ってのは、どんなに悪辣なやつでもどこか優しいとこがあるとか、客に感情移入をさせるための工夫をしなきゃならんものである。これじゃ、鈴木は、過去のことは過去のこととしてキレイサッパリ忘れて、新しい恋に生きる卑怯者に過ぎない。炎尾燃が見てたら、こんなやつ、鉄拳制裁だぞ。
 脚本家がバカでヘボなので、せっかく主役の子を使ったのに、つまんないどころか腹立たしくなっちゃった一編。

 『ワンモアチャンス』。
 監督助手の山口晃二の脚本・監督による、東海林勇二<ユージ>(鈴木祐二)、成瀬金太<キンちゃん>(金原泰成)、星野宏<ホシノ>(星野広樹)、阪本友也<ユウヤ>(西川祐也)のウォーターボーイズ・バックダンサーズ(^o^)の4人をフィーチャーした一編。
 体操一筋にやってきて、ふと、自分の未来に疑問を感じるユージ。「オレって本当は何をしたいんだろう?」。
 モチーフそのものはありふれてるものだけれど、じゃあ青春ものにありがちな熱い友情物語が展開するかというとそうはならない。なにしろホシノとユウヤは、ユージが悩んでる間、高校三年間の思い出造りに、立ちんぼさんに会いに行っているのである。そうかそうか、彼女いないヤツはそういうことやってたのか。30分で1万5千円(二人で3万)ってのは、相場としては安いんかな。
 結局、ユージの悩みも叫んでるうちに何となく解消する。その何となくな感じがイマドキなんだろうな。

 『がきんちょハート』。
 ウォーターボーイズチョイ役の望月大志<ダイシ>(松永大司)をフィーチャーした一編。メイン5人組の一人、金沢孝志<カナザワ>(近藤公園)も出演しているが、映画本編には登場していないアッコ(宮下ともみ)の出演がこのサイドストーリーの見どころだろう。男をグーで殴れる女に悪いやつはいない(^o^)。
 これって、まさしく『ウォーターボーイズ』の裏ストーリーっつーか、アンチドラマになってるのな。ダイシってただのバカで、シンクロやろうと考えたのも、カナザワたちがテレビに映ってたの見て羨ましくなっただけという単純なもの。「悩める鈴木」とは真逆なのだ。アッコと付き合い始めたのも、不良に絡まれてるアッコを助けたところからだし、「シンクロやろっかな」と言ったらアッコから「バカ?」と嫌われるのも、本編の静子がシンクロに偏見がないのと比べると全然違う。で、ダイシがふられてしょげて、シンクロやる気なくすかと思ったら、これがならないのだね。そして超常現象研究が趣味のカナザワにつき会って、UFO見物に出かけて行く。お空じゃUFOがホントにシンクロ演技。……って、どういうストーリー展開だよ、脈絡ねーぞ(^_^;)。つまり、「バカの行動に理由はない」ってことなんだろうな。いや、楽しいんだけどね。
 脚本・監督はメイキング演出担当の白石晃士。

 『太田HOLE』。
 文句ナシの傑作。いやケッ作か。もう最初から最後までバカなんだものなあ。
 監督は五編中、唯一の女性、片岡英子さんだけれど、「女性監督に映画は撮れない」というのが偏見だっての、よく分るね。
 映画本編で「ガリガリの体を鍛えたい」とストレッチやってた太田祐一<オオタ>(三浦哲郁)が主役。主役だが、ほとんど全編、彼は穴の中である。歩いてていきなり、道端に空いてた穴の中にアタマからまっさかさまに落ちたのだ。普通そんな落ち方、せんわ(^_^;)。そして彼の受難の1日が始まる。
 一緒にいた兄貴(本編で警備員A役だった田中要次)は今週の「ヤングヤング」の話しかしないで全然助けようとしない……っつーか、弟の存在、忘れるし。
 それから穴の前に現れる人間たち、誰も太田を助けずにからかったり面白がったりするばかり。映画本編に登場した水族館の女の子(大津綾香)はやっぱり「バカじゃん!」と捨て台詞だけ食らわしてくれる。こいつ絶対ヤな女に育つな。
 突然現われた謎の男も、ヤカンに水を入れて下げるだけで太田を助けようとしない。というより、ヤカンの水が飲めない太田を見て楽しんでいるのだ。
 雨が降ってきて穴の中に水が溜まり、溺れかけるオオタ。彼がなぜ助かったかというと、謎の女(林田麻里)が泳いできて助けてくれたからである。穴の中って泳いで来れるほどに広くはないのになあ。でもそれが太田の幻想だとしたら、女はどうやって太田を助けたのか? っつーか、それ以前にその女、誰だ(^_^;)。
 なんだかよく分らないが、その事件がきっかけになり、彼はシンクロに目覚めたのであった。なぜ?(ー∇ー;)?

 まあしょーもない作品が混じってはいるが、新人にこういう形で短編映画を撮らせるというのは悪くない。DVDの特点もこれくらい凝ってくれると、まさにコレクターズ・アイテム。わざわざ買おうって気になるものだよ。

2001年12月30日(日) ケーキとシュークリームと焼き鳥と/『ヒカルの碁』15巻(ほったゆみ・小畑健)/『細腕三畳紀』(あさりよしとお)ほか
2000年12月30日(土) 誕生日スペシャル/アニメ『フリクリ』5巻、『競作五十円玉二十枚の謎』(若竹七海)



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