無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年12月27日(木) ぷれぜんとってぷれぜんとってそーゆーもんか?/『パンゲアの娘 KUNIE』2巻(ゆうきまさみ)ほか

 今日はちょっと仕事に出るだけ。
 朝寝も出来るし、昼前に早く帰れるしで、いつもこの程度の仕事量だったらラクなんだが。
 天神まで出かけるつもりで、しげに職場まで迎えに来てもらおうと携帯に連絡を入れるけれど、しげのスカポンタンは、昨日、夜更かしでもしてたのか、いくらコールしても起きて来ない。
 これももう、毎度のことなんで、今更、文句を言う気も失せている。
 仕方なく、自宅近くのセブンイレブンまでタクシーで戻って、買い物をして時間をつぶす。
 そこで改めてしげに連絡を入れて、「天神まで出かけないか? 買い物もあるし、メシおごるぞ」と誘うと、ようやく思い腰を上げる気になったよう。
 昨日も似たようなパターンだったような気がするなあ。結局「メシ」「肉」で釣るしかしげを動かす方法はないのかなあ。
 「メシ」の一言で動けるんなら、初めから動かんかいと言いたいが、それができないってことはしげの頭の程度が日光猿軍団なみだってことなんだよな。なんだか、ビル・マーレイにビスケットをあげつづけて、破産しそうになるスティーブ・マーティンの気分である(わかりにくい例えですみません。でも解説はしません)。

 でも、呼び出されたしげ、なんとなく気分が悪そうな顔をしている。
 ありゃ、ホントにコイツ、具合が悪かったのかな、と気後れした時点で、もう、私の負け(-_-;)。
 「買いものって、何を買うの?」
 「DVD、買い損ねがあるんだよ」
 「……また、何買うの……?」
 「……『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン』……」
 「……帰っていい?」
 「あ、お前への結婚記念日のプレゼントもあるから!」
 しまったなあ、まだなんにも考えてなかったのになあ。ともかくその場で何か考えつくしかないなあ。
 覚悟を決めて、まずは地下鉄の東比恵駅までしげの車で行く。
 天神まで車で行くのは、今の昼過ぎの時間帯だと、駐車スペースはほとんどない。
 以前、そういう無謀をして懲りた経験があるので、今回は、いったん、駅前の駐車場に車を停めておいて、地下鉄で天神まで出る算段なのである。
 ちょっとお高めの買い物をするなら、銀行でいささか軍資金が必要か、と西日本銀行の前に行くと……。
 あれ? なんか見たような自転車が……。
 うわあ、これ、先週の金曜に買い物に行ったとき、乗って来た自転車だ!
 帰りは自転車に乗って来たこと、すっかり忘れてて、タクシーで帰ってきてたんだった。
 ひい、ふう、みいと、六日もそのまんま。
 一応、鍵はかけてたけど、よく盗まれなかったよなあ。ボロなせいもあるかもしれないけど。
 おカネを卸して、自転車に乗って駐車場まで戻ってくると、しげが目を丸くする。
 「どうしたん! その自転車……」
 「いや、こないだ、乗ってきて、そのまま忘れてた……」
 「いつから!」
 「み、三日くらいかな?」
 ついサバ読んじゃったところが小心者なところである。
 しげも怒るより、私のマヌケを見られて楽しそうにニヤニヤ笑っている。……さっきまで気分悪そうにしてたのはどうなった。
 なんかもう、今日は完全にイニシアチブを取られそうな気配である。


 LIMBでDVDを買って、福家を回ったあと、天神コアのレストランで食事。
 そのあと、三越で、いよいよしげへのブレゼント探し。
 「やっぱ、結婚記念のブレゼントは指輪とかネックレスとかがいいなあ」とかいうので、その手の店を回る。
 「予算はいくらくらい?」
 と聞かれたので、小声で「まあ、5万以内?」と答えたら、しげ、店の中だと言うのに「そんなに!?」と大声をあげる。
 ……コラコラ、そんな声出したら、まるで私がン百万もするダイヤを買うようではないか。
 実際、しげは気がついてないようだったが、店員たちの目が、そのとき一斉にキラリと光ったのだ。
 しげのアクセサリーの感覚って、せいぜい一万円以内だと言うのに(考えてみりゃ、ホントに安い女だよな)。
 もう、店員さんがわざわざカウンターの中から出て来て、「ちょっと身につけてみられませんか?」とネックレスなんかを勧めることったら。
 それがもう、ホントに十万以上ってのばっかり持ってきやがんの。
 ……しげのスタイル見ろよ、三越にジャンパーとジーパンで来る女が、なんでそんなケバケバしい宝石つけるかって。
 腋の下を脂汗が流れるのを感じちゃいたが、表向きニコニコと、「他のもいろいろ見て、じっくり決めようよ」としげに声をかけながら、できるだけこの場を離れるきっかけを作ろうと必死である。
 結局、しげの気に入ったアクセサリーが決まらず、別の店に回ろうということになったが、この間、30分以上、生きた心地がしなかった。
 ……しかし、しげも、たいして買う気も無いくせに、冷やかすだけ冷やかすって、いい根性しとるわ。

 そのあと、年末録画用のビデオテープを買いにビックカメラに流れる。
 ウチの近所の電器屋にはあまり置いていないS−VHSの180分テープを買いこんで帰ろうとしたら、しげがパソコンの液晶ディスプレイの前で、じっと『ルパン三世カリオストロの城』の映像が流れているのを見ている。
 「どうした?」
 声をかけてもしばらくは答えず、ほうっとタメイキをついて、「これいいやろ?」と言う。
 「ああ、キレイだな」
 「……ほしいんよ。新しくパソコンも来たし」
 ちょっと、イヤな予感がした。おもむろに振り向いたしげはあたかも愛玩動物のような目で、一言。
 「買って?」

 というわけで、結婚記念のプレゼントは、KCSの液晶ディスプレイ(4万円ナリ)になったのでした。

 「結婚記念のプレゼントはアクセサリーとかムードのあるものじゃなくちゃ」とかホザイとったのはどこのどいつやああああああ!
 しげの具合もすっかりよくなったみたいだねー。
 ああ、よかったよかった。……なにがだよ。


 帰宅して(当然私は自転車で寒空を帰りました)、しばらくニュースともご無沙汰してたので、何気なくテレビをつけると、池田小学校児童殺傷事件の宅間守被告の初公判の日だった。
 宅間被告、開口一番、「座ったらあかんのか?」とやらかして、裁判長から「立ったまま聞いてなさい」とたしなめられる一幕がある。
 一応、「命をもって償います」とは言っているものの、だるそうに足を組んだりする態度に、マスコミはこぞって「反省の色がない」と怒りの報道。
 けどさ、反省するほどの理性があるんなら、もともとこんな事件、起こしちゃいないんじゃないの? それに、下手に反省されちゃうと、「死刑」に出来なくなったりする可能性もあるから、これは「正しい」行動と考えればいいんじゃないのかね。
 だいたい、遺族は被告が「反省」したら許せるんだろうか。
 どんなに反省したって、自分の幼子を奪われた恨みは消せないのではないだろうか。
 第一、被告が「反省」するためには、拘置所に「隔離」した状態では不可能だろう。遺族の恨み一つ受けない「安全圏」にいたのでは、もともと自分の犯した罪の重さを感じるきっかけ自体、生まれまい。
 弁護士がどんなに弁舌を振るって被告に反省を求めたところで、肝心なところでその言葉には「命の重み」が欠けている部分があるような気がする。努力している弁護士さんには悪いが、所詮は彼らだって遺族とは他人なのだ。
 「さっさと死刑にしてくれへんかなあ」みたいな被告の態度は、まさしくその「命の重み」が伝わっていない証拠だろう。それとも、その被告の「無反応さ」がまさしく精神病によるものならば(詐病説も報道されたが、これだけの事件を起こしてるんだから、そんなに簡単に判断できるもんじゃあるまい)、この事件は、回避することが出来なかった悲しい出来事としか言いようがないんじゃないか。
 報道を聞いていて胸糞が悪くなるのは、「どうしたら宅間被告を死刑にできるのか」という視点がウラに見え隠れしてる点だ。死刑にして終わりって問題じゃないだろうに。遺族のやりきれない思いをどうしたらケアできるのか、こういった事件の再発を防ぐことはできるのか、それを語っていくのが報道の仕事なんじゃないのか。
 マスコミ、もうこの事件を過去のものにしたがっているのである。


 野村佐知代、5000万円払って保釈。
 そんだけの金があるなら脱税すんなよって感じだが、追っかけのレポーターの方がどうにも見ていてイジマシイ。
 「野村ヒコク〜!」なんて言って怒鳴ってるが、こういう悪辣なヤツを憎悪する気持ちって、実は幸せな人間を妬む宅間被告の心情とたいして変わらんのよ。
「ヒトコトお願いします!」なんて、ホントにバカだもんね〜。裁判前に自分が不利になる発言するわけないっての。
 どんなに悪いやつでも、マスコミ報道を通してみるとみんな被害者に見えてくるからなあ。本当にその罪を償わせたいと考えてるんなら、そんな事件を「面白がる」報道なんかするな。事件を陰で笑って楽しむのは、居酒屋の酔客と“裏”モノの仕事なんだってば。


 アメリカ、ニューメキシコ州の教会で、『ハリー・ポッター』シリーズが焚書にあったとか。
 理由は「若い読者が魔術に興味を持つから」ということだったが、やっぱり宗教関係者にイカレたやつが多いのは、洋の東西を問わないようである。


 マンガ、ゆうきまさみ『パンゲアの娘 KUNIE』2巻(小学館・410円)。
 『廃棄物13号』以来のゆうきさんの怪獣ものってことになるのかな、これは。
 なんだかベムラーを細長くしたような怪獣が出て来たけれど、船を通り抜けてしまったってことは、これももしかしたら「残留思念」なのかね?(^o^)
 考えてみたら、「怪獣が実は思念体」ってのは「イドの怪物」あたりがルーツで、いい加減使い古されちゃってるから、それを『ゴジラ』に持ってきてるってことだけで、なんかゲンナリしちゃったのだな、私は。同じネタなら、たがみよしひさの『滅日』のほうが、ずっと面白いよ。あれも『デビルマン』が相当入ってるけど。
 ゆうきさんのホームページ、『逃げちゃダメかな?』もここ一月以上、全然更新されてないんだけけれど、先月のスケッチブックのコーナーで、今度の新作パトレイバーについて、「押井版とは違うよ」ととの但し書き付きで中身を簡単に紹介している。 
 「まんが版の『廃棄物13号』は“ウルトラシリーズ”の味わい入れてみましたが、映画『WXIII』は“怪奇大作戦”になっていて、まんがよりだいぶ怖い。ちなみに僕はどっちの味わいも好きですが、『パトレイバー』のファンが映画観たらやっぱ怒るかなぁ、とちょっと不安。良い映画にはなってると思うので、公開時には押井守脚本、プロダクションIG制作のフルデジタルアニメ『ミニパト』(かなり面白いらしい)との併映になりますから、こっち目当てにしてでも劇場に来てくれると嬉しいです。」
 もちろん行きますけどね。
 私は押井演出のパトもそうでないパトも両方とも好きなんだが、どちらにより親近感を抱くかと言ったら、やっぱり押井版になっちゃうのだなあ。それは、押井さんが海出した帆場英一と、ゆうきさんの内海課長という、二人の悪役キャラの違いを見てもそうと言える。内海さんも好きだけど、犯罪者としては詰めが甘いんだよな、性格は所詮子供だし。なにしろマンガ版は後藤隊長と帆場が知らずにタッグ組んでたようなものだから、内海さん程度じゃ敵うわきゃなかったのだ。
 『パト1』が好きなのは、後藤さんの「所詮負け戦」みたいな発言がズンと来るからなんだよな。
 こう言っちゃなんだけど、ゆうきさん、ホントに才能を出しきって作品描けたことってまだないんじゃないかと思う。だって、『パト』はやっぱ「ヘッドギア」って枷の中でしか描いてないし。どうしても押井守の影に隠れて、ゆうきさんの姿ってのが映像からは見えて来ないのよ。
 『廃棄物13号』は、パトシリーズの中でも異質だったし、ゆうきさんテイストは随分あったけれど、果たして単体の物語として面白かったと言えるかどうか。特車二課の面々を背後に回して作られた今度の新作が、とり・みき脚本、高山文彦監督の手を入れてどの程度のものに仕上がるか、そこからゆうきさんの資質も改めて浮かびあがって見えてくるんじゃないかと思うんである。
 そういうわけで、今度の映画は奇しくも、押井・ゆうき対決みたいな感じになってると思う。来年の期待したいアニメ映画、あまり多くはないんだけれど、やっぱり『パト3』に期待しちゃうのだ。
 ……『KUNIE』の感想がほとんどないな(^_^;)。


 マンガ、夏目義徳『トガリ』6巻(小学館・410円)。
 連載は既に巻末ボロページガ定位置になってて、おそらく余命いくばくもなかろう『トガリ』。それでも6巻以上になりそうなのは頑張ったほうかなあ。
 絵もだいぶ上手くなって来たのに、もう一つ「洗練」って言葉からは離れてるしなあ。
 前巻から登場の“ex”、ようやくメンバーの一人を倒しただけだから、本当ならもう4、5巻は続いてもいい感じなんだけど、せいぜいあと2巻ってとこかもしれない。
 持ち出してきたテーマが新人のマンガ家には重すぎる、ということはあったのかもしれない。単純なヒーローものにしたくなくて、「悪をもって悪を切る」設定を考えたのはいいけれど、おかげで、トウベエがいつきを助けるのにも「他人を守ろうとしてではなく、自分にとって気にいらなかっただけ」と、苦しい説明をせざるをえなくなってるし。
 でも、どこかで、「愛」で「トガリ」を使えるようになるって形に上手く切り替えられないと、まとまりがつけられなくなるんじゃないかなあ。 

2000年12月27日(水) やっぱり今日も眠い/『富士山 第4号』(さくらももこ)ほか



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