無責任賛歌
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|藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年02月16日(金) なりたくて病気になってるわけじゃないやい/舞台『トランス'98』ほか

 喉をすっかりやられてしまって、咳が止まらない。なんでこんなにからだが弱いのだ、酒もタバコもやらんのに。体の丈夫なヤツはすぐ「根性が足りんのだ」と冷ややかな目で見るが、だったらテメエも根性で不老不死になって見せろと言いたい。
 ……いかんいかん、また心がすさんでいる。こういうとき女房の愛があればなあ。
 ああ、人間って、本気で辛いときには一番手に入らないものを求めるものなのだなあ(T_T)。

 栄養がつくものがほしいと思って、女房に買い物を頼むが、買って来たのはインスタントラーメンの山。だからわしゃ風邪引いてるんだってば。
 しかし女房はいつだって私が病気であることを信じないのである。熱を出そうがふらついていようがあふあふ言っていようが、演技だと思っているのである。
 「喉アメどこ?」と聞いても「知らん』の一言。
 ……まあねえ、そりゃ確かに具合が悪いと言いつつこうやってパソコンに向かってんだから仮病じゃねえかと疑われても仕方ないことではあるんだけどねえ、もう病気の時にはココロの方もちょびっとトチ狂ってるんだと思っていただきたい。
 実際、大人しくしてればいいのに、なぜ動いてしまうのか、私自身にも分らないのだ。ともかく心が全く落ち着かず、何かをしていないと気がすまない。アタマの中が言葉で溢れかえり、それをどこかに書きつけたくなる。……栗本薫のことを嗤えんなあ。
 じっとしているためには仕方ないからビデオを見たり本を読んだりするしかないのだ。

 そう言うわけで今日は黙々と一日中未見のビデオや本の整理をする。そんなホコリまみれの仕事してどうするんだ。それこそ体に悪いぞ。でも今日はハナから狂っているのでどうしようもない。咳き込みながら本の山を積み上げていく。
 その間女房はと言えば、家事もしようとせず、一人でわき目もふらずにテレビゲームをしている。夫が夫なら妻も妻だ。まともな神経なんか持っちゃいない。

 片付けの真っ最中に火災報知気の点検が回ってくる。とっ散らかってる部屋を見られるのは恥ずかしいが、私が偶然居合わせてよかった。女房一人だと、居留守を使っていたに違いないからだ。
 女房は人に見せられない格好をしていたので(どんなだ)、布団にくるまって隠れる。日頃から格好は家の中でも気にしろと言うのに聞かないのだ。そんな格好をしているおかげて、すぐに体を壊してしまうのだが(だからどんな格好なのだ)、自業自得というものであろう。

 『雨柳堂夢咄』6、7巻(波津彬子)、前巻はちょっと誉めすぎたかなあ、今巻でまた少し「作りもの」めいた作品が続いて、レベルダウン。ようやく青二郎と釉月が出会うが名乗りあうことはない。まあはっきり出会わせちゃうとこのシリーズ終わってしまうから当然の演出ではあるのだが、そこに多少のあざとさが見えるのである。
 人物を増やしすぎたのもマイナスになりつつある。何しろ人物の書き分けが非常に下手な人なので、アイデアが一つすべるととても読みにくいのである。もう先は見えちゃったし、この辺でケリをつけた方がいいかも。

 以前買ってまだ見ていなかったビデオ、鴻上尚史作『トランス'98』を見る。やはりビデオでオリジナルの『トランス』、生で最新の『トランス』と一応全ての『トランス』を見たことになるが、本作が一番つまらない。
 一見、精神病院を舞台にしているように見えるが、この脚本は実のところどこにもない世界を舞台にしている。主人公三人がそれぞれに心を病んでいるとすれば、そこに医者はいない。医者のいない精神病院はあり得ない。これはやはり『朝日のような夕日をつれて』以来、鴻上尚史が描き続けている現代人の心のユートピアを追い求めた作品と見るのが一番わかりやすい解釈だろう。
 だからこそ、逆に医者に扮した時の三者の演技は細心の注意を払って医者になりきらなければ説得力がない。内野聖陽、奥山佳恵、三宅弘城の三人は誰一人として医者に見えない。特に初めのうちは奥山佳恵こそが本物の医者、と客に思わせねばならないのに、全く医者に見えないのは致命的である。新作にともさかりえが起用されたのはもしかしたら精神科医の香山リカに顔立ちが似てたからかな、とふと思ったりもした(^o^)。実際、ともさかが医者らしく見えたのにはビックリしたものである。
 何がよくないと言って、叫んでばかりいるのがダメなのである。みなさんが患者なら「それはお前の妄想だ!」と叫ぶ医者の言うことが聞けるだろうか?
 もちろん三人は実は医者でもなんでもないから叫んでもいい、と解釈することも可能だが、もしそうなら彼らに救いの道はない。彼らの狂気はいずれ破綻する。「狂ってたっていいじゃないか」という「狂人のユートピア」(『ドグラ・マグラ』だな)を描くのが脚本の基本にあるのは明らかだから、崩壊を予感させる演出を行うのは演出家や俳優には悪いが誤読に過ぎる。

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 某氏より『夏の秘密』に関するメールが届く。
 基本的に個人メールの中身についてこの日記にアップすることはしないでいるのだが、映画の話題についてのことだしプライバシーを暴露するものではないので書かせて頂こう。「日記にアップしますよ」なんて相手の許可取ったわけではないので、念のためお名前は書かずに置きますが(某事件からこっち、えらく神経質になってるなあ)。
 前回、「北原佐和子主演」みたいなことを書いたが、厳密に言えば彼女も所属していたアイドルユニット三人組、「パンジー」主演で企画された1982年の映画である。残りの二人は真鍋ちえみと三井比佐子。もともとこの三人、それぞれソロのグラビアアイドルとして活躍していたのだが、イマイチぱっとしてなかった。いや、北原佐和子だけは絶大な人気を誇っていたのだが、歌を出した途端、人気が急降下した(^_^;)。
 「歌の下手な歌手」というのは70年代アイドルの乱立以来、ごく当たり前のことになってしまったが、これは実に群を抜いていた。個人的には、能勢慶子・安田成美と合わせて音痴アイドル三人娘と呼んでやりたいくらいである。この三人に比べりゃ、今時のアイドルは華原朋美もモーニング娘。も、天才的にうまい。当時カラオケが普及してて点数表示機能があったなら、自分の持ち歌ですら5点とか8点しか出せねえんじゃなかろうかというほどのヒドさだったのだ。
 覚えてる人いるかな? 北原佐和子の『マイ・ボーイフレンド』。もともと声域が広くないのに甲高い声で「まい、まい、まい、ぼ〜いふれ〜んど」と尻上がりに音を上げさせられて声が届かず上ずってた、あの聞くに堪えない珍曲であります。あの曲出した途端、各週刊誌のグラビアから水を引くように北原佐和子の記事が消えていったのを昨日のように覚えていますよ(実はファンだったのか……?)。
 多分、本人も歌手になる気はなかったのではないかと思う。自分の音痴も熟知していたのではないか。テレビに出た時の彼女はグラビアと違って、まるで自信なさそうで暗かった。暗いアイドルが受けていたのは藤圭子までである(^o^)。
 「パンジー」の結成は起死回生の意味合いが強い。明るいアイドル路線が無理なら、謎めいた美少女路線で行こう、とプロダクションが考えたかどうかは知らんが、原作執筆を依頼したのが『皇帝のいない八月』の小林久三(どっしぇー!)。更に脚本が『わんぱく王子の大蛇退治』の池田一朗(と言うか、作家の隆慶一郎ね)。こんな陰陰滅滅コンビで何が出来るかというと、横溝張りの因縁話だったりする。学園内で起こる連続殺人、失踪した美少女転校生、東京オリンピックの年に起こった過去の犯罪にまつわる秘密……。完全に方向性間違えたな(^_^;)。
 もちろん映画は大コケ。だいたいユニット組んでいながら、所属プロダクションがそれぞれ違うために主題歌を真鍋ちえみのソロでしか出せなかったのだ。戦略を初めから勘違いしていたとしか言い様がない。
 以来、この三人娘の名はほぼ完全に芸能界から消えた。
 と思っていたら、北原佐和子、生き残っていたのですねえ。80年代、その噂を殆ど聞かなかったのに、90年代に入って、サスペンスドラマや舞台に脇役ながら重要な役で数々出演。実は私も去年『必殺仕事人』の舞台でナマの北原佐和子を見ている。四十も近いってのにまだ町娘の役だぜ。でもそれが違和感ない(・・;)。好きな男との仲を引き裂かれ、殺されて死の間際に主水に殺しを依頼するという薄幸の美少女の役……って、『夏の秘密』とつながってるなあ。路線変更がやっと実を結んだか。
 私は特別アイドルオタクではなかったので、昔のマイナーアイドル映画をそんなにたくさんは見てはいないのだが、今になって、見ておけば話のタネになったのにな、とちょびっと後悔している(見てたらもっと後悔してたろうが)。
 いつの日か、大槻ケンヂも感涙したというセイント・フォーの『ザ・オーディション』だけは見て死にたいと思ってはいるのだが。「不思議、東京、しんで〜れら〜」。

 スーパーチャンネルで『アウターリミッツ完全版・二階にいる生物』見る。この『アウター』、『ミステリーゾーン』の後発なんでどうにも二番煎じの感が強かったのだが、こうして年月が経ってみると、どれも古典的で味わいが出てくるものである。今回の話、要は隠れ里の仙人は宇宙人でありましたって設定で、それ自体は陳腐なんだが、途中、屋敷の中を迷ううちに主人公がドアだけが立ってるようなシュールな世界に入りこんでいくシークエンスが面白い。
 この「ドアだけの世界」って、よく使われるけど(『ルパン三世Part�掘戮芭詭收興腓發笋辰討燭福法∈能蕕忙廚い弔い燭里話�なんだろうなあ。サルバドール・ダリの絵あたりか?

 カートゥーンネットワークで先々週から始まった『逮捕しちゃうぞ』、前回まではOVA版を放送してたが、今日からテレビオリジナル。福岡の民放では未放映なので初見である。
 でもテレビシリーズになった途端、作画レベルがガタ落ちなのには幻滅。脚本自体は短い原作を横手美智子さんがメリハリある展開に構成し直して、うまく出来ていたのになあ。OVAと映画版を見て、これならテレビシリーズもDVDで買ってもいいかなと傾きかけていたのだが、これは買わなくて正解。
 女房は藤島康介の「中途半端に面白い」(つまり設定とかよく練られてはいるけれど、予定調和の展開しかしないし、オタク向けの受け狙いがミエミエであざとい、と言いたいらしい)点が嫌い、と言っているので、もし買っていたら大変な家庭争議になっていたであろう。以前『ああっ女神さまっ』のLD買った時も「そうよね、あんたは自分の稼いできた金なんだからどんな下らないことに使っても自由なんだもんね」とネチネチ言われたし。
 でも『逮捕』のOVAや『女神』の初期シリーズはなかなかの秀作だったんだがなあ。どっちも映画版でコケたのがよく似ている(^_^;)。もともとこの作者、あまり大風呂敷を広げられる人ではないのよ。だから『小っちゃいってことは便利だねっ』くらいの短編シリーズが一番面白かったりするのだ。

 漫然とテレビをつけていたら、『地球防衛放送パンドラ』の再放送とやらを偶然目にする。アイドル予備軍みたいなコスプレねーちゃんたちがオタク情報を紹介する、という番組なんだが、ガイナックスとコンプティークのサバゲー大会なんて放送して見てたヤツいるのか。
 私が「おっ」と思ったのは、字幕に「とり・みき、大平透」と出たからだ。洋画の吹替は字幕ファンから叩かれることが多いが、名声優による吹替えは決して字幕に劣るものではない、と主張し、本まで作っちゃったのがとりさんである。これは結構、大平さんのコアな話が聞けるのではないか、と思ってみてみると、さすがに声優創世記から活躍しているだけの人ではある。汲めども尽きぬ井戸のように面白いエピソードが、次から次へ出てくること出てくること。
 スーパーマンの番宣のために大平さん自身、あの格好をされた話とか(当時はスリムで、実に似合っている)『刑事コジャック』のテリー・サヴァラスはもともと大平さんが演じる予定だったのが、「番宣のため頭を剃れ」と言われて断った話とか。
 『もののけ姫』について真っ向から批判していたのにも驚いた。「声優には声優としての演技があり、そのキャラクターの声になりきる技術を身につけている。なぜ有名俳優にばかり声をアテさせるか」という意見である。……言葉を選んじゃいるが、何であんなヘタクソどもにやらせるかってことだろうな。
 確かに大平さんがこう言うとそれなりの説得力はあるんだけどなあ。基本的に私もこの意見には賛成である。ただし、問題点がいくつかあることも事実だ。
 例えば、黒澤明や大島渚が、映画で素人や芸人を使いたがったのはなぜか、考えてみるがいい。既成の俳優の手垢のついたクサイ演技を嫌ったせいではないのか。黒澤明にしてみれば、名優松村康雄であっても「内田百�量鬚肪�がいいかって考えた時、松村しかいなかったんだよな」程度の俳優なのである。
 大平さんは「ハクション大魔王をやった時も喪黒福造をやった時も大平透が演じているとは気づかせない演技をした」と言っているが、そりゃ大して洋画もアニメも見ない人ならだませもしようが、ちょっとコアな人なら、大平さんの声に気づかない人はいないぞ。宮崎駿が俳優を使ったのは、あくまで演技プランのうちだと思う。少なくとも、箔づけや人気取りのためではない。実際、森繁久彌や美輪明宏は声優としての実績もあるのだ。それを十把ひとからげに「俳優を使うな」と言うのは天に唾する行為であろう。
 『もののけ姫』についての私の意見は、「田中裕子は使うべきでなかった」、これだけである。彼女の「撃て!」と言うセリフと、同じような役柄である『ナウシカ』の榊原良子演じる「なぎ払え!」のセリフを比較してみると一目(一聞?)瞭然だろう。気品、気迫、声量、どれを取っても榊原良子のほうが上であった。これは宮崎さんの目がね違いであろう。
 しかし他のキャストで言えば、モロの声など、私にはもう美輪さん以外の人がアテて、あれに勝てるとは思えない。勝てるという声優がいたら、それは相当の自信家か、でなければただのバカだと思う。声優界だって、そうそう名優ぞろいというわけではないのだ。だから今はちょっと「芸」の必要な役柄になると全て山寺宏一に回ってきちゃうのである。
 今度の『千と千尋の神隠し』の声優はどうなるのかなあ。夏公開ならそろそろ決まってないとスケジュール的にキツイと思うんだが。

 女房が夜中になってようやくお籠もり部屋から出てくる。「なんかメシつくってくれ」と頼んでも無視して風呂に入る。気分はもう辻仁成。……そこまで落ちたかないのになあ。



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