委員長の日記
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2005年06月30日(木) 5年目を迎えて

●はいはいからつかまり立ちへ・・・
「可部おやこ劇場」から「子どもネットワーク可部」に体制を変えてから4年目が過ぎようとしています。
法人格の認証を受けたのが2002年1月ですから、正式にNPO法人としてスタートを切ってからは3年半という事になります。
いずれにしても、この4年間は本当に山あり谷あり…(いいえ…谷あり谷あり・・かも)の連続でした。

それまでの会員が会員のための活動を作っていくという会員制の会から、地域のすべての子どもたちを視野に入れた活動を作っていくというNPOの考え方を、それまでの会員に理解してもらうことの難しさ。
それまでのように、会員としてのメリットが無い・・という所からの会員拡大の難しさ。
すべての活動に誰でも参加できるように…ということから、それまでは毎月会費を納めることで年に数回参加できていた鑑賞事業も、すべてがチケット売りということで、スタッフや委員さんたちの負担がそれまで以上に増えてしまい、つい、新しい事業に取り組むことに臆病になってしまう。

けれども私たちが「何をするべきなのか?」と模索している間も、子どもたちを取り巻く社会の環境はちっとも良くなっていかない、相次ぐ少年犯罪、子どもへの虐待、増え続ける不登校・・・
地域に根ざした活動とはどういうことなのか?
どうすれば私たちの活動をより多くの人たちに理解してもらうことが出来るのか?
今、私たちに出来ることは何なのか?
そのことを問い続けた4年間でした。

NPO法人として発足してからこれまでの活動のほとんどは、様々な団体からの助成を受けて実施してきました。
言い換えれば、このような助成金がなければ、参加者の負担が大きくなり、特に鑑賞事業などのように大きな経費が必要となる事業には取り組めなかったということが言えるでしょう。

また、NPO法人の活動の多くは、会員やサポーターのボランティアで支えられています。
しかし、先に述べたような、活動を支えるために必要な業務に従事するスタッフに対しては、一定の報酬を支払うことが認められています。
けれども、子どもネットワーク可部の場合は、現在はすべてのスタッフが無償ボランティアで構成されています。
つまり、事務局長以下、毎日のように事務所に通って、日々の業務や、経理、行政などとの連携に関わっているスタッフへの人件費が予算化できないという現実があります。

このように、子どもネットワーク可部の今の状態は、法人の経営という視点で見たときには、まだまだ自立した団体ではなく、事業経費については様々な団体に支えられ、また、運勢経費に関しては、多くの人達に支えられて、ようやくつかまり立ちができるようになった…ということができるでしょう。

しかしそのような助成金を活用しながら、一つ一つの活動にこだわり、ていねいに取り組んできた結果、地域での子育て支援のNPOとしての認知度は徐々に浸透し、昨年度に引き続き、今年度も公民館との共催事業として年間を通じてより多くの事業に取り組むことができるようになりました。
また、全国の多くのおやこ劇場・子ども劇場が会員の減少に悩み、その運営に苦慮している中で、子どもネットワーク可部の会員数はこの3年間でほぼ横ばい状態を保っています。
このことは、「我が子のために」ではなく「地域の子どもたちのために」という私たちの活動のミッションが会員のみなさんに理解されている結果だといえるでしょう。


●自分の足で歩き出すために
 では、つかまり立ちから、自分の足で歩き出すためには、これから私たちはどうすればよいのでしょうか?
 先に述べたように、事業経費に関して言えば、個々の活動への参加費…つまり受益者負担という考え方をより広く理解してもらう必要があると思います。
 行政や民間のボランティアによって、さまざまな子育て支援の事業が、無料で提供されている今、参加費を払って、活動に参加するということは、その参加費に見合う満足感を、一人一人の参加者が実感できるという必要があると思います。
 
 だからこそ、私たちは、鑑賞事業やワークショップのように、プロの劇団や専門的な講師を招いて実施する事業については、その内容や作品にこだわり、参加した人達に必ず満足してもらえるという確信のもてる事業を実施しています。

 しかし、いつまでも助成金に頼っていたのでは、参加者の負担は多少軽減できるかもしれませんが、反対に助成金がなければ、取り組めないという状況になりかねません。
 かといって、参加費を安く設定して、動員する人数を増やして、その経費をまかなえば良いということではありません。
 つまり、50万円必要な事業に取り組んだ場合、参加者の設定を200人にした場合は一人2500円の負担ですが、500人に設定すれば1000円ですむのだから、500人集めればよい…というわけではないのです。

 鑑賞事業や、ワークショップについては、その作品を十分満足してもらうための、理想観客数や、充実したワークショップにするための最適な参加者数というものがあります。
 つまり、200人規模の作品を500人で見ても、参加者した人達に満足してもらうことはできないのです。
 それが、活動の質にこだわるという意味だといえるでしょう。
つまり、内容と質に対しての対価として参加費が設定されているのです。
今後、私たちがより多くの事業に取り組んでいくときに、このことをしっかり伝えていかなければ、ならないと思います。

次に、事務所の維持費や人件費などの運営経費について考えて見ましょう。
私たちが納めている、年会費は、基礎会費として、運営経費に充てられます。
現在の会員数では、家賃や光熱費などの最低限の事務所の維持費(年間約120万円)をまかなっていくのが精一杯です。
常勤の有償スタッフを保障するためには、最低年間100万円は必要でしょう。
簡単に言えば、現在の会員数が単純に2倍になればその実現が可能になるわけです。

では、なぜ常勤の有償スタッフが必要なのでしょうか?

言うまでもありませんが、日常の業務には、様々な専門的な知識が必要になります。
会費の管理や、会員数などの組織運営の管理、経理などは言うまでもなく、行政との連携や関係各機関への報告業務など、スタッフの仕事は非常に煩雑で大変な作業です。
 その対価として人件費を支払うということは、法人としての当然の義務なのですが、現在の会員数ではどうしても、スタッフの善意に頼らざるを得ません。
しかし、このことは、言い換えれば、とても不安定な状況で運営されているということです。
今後、私たちがより充実した活動を実施していくためにも、常勤の有償スタッフの確保は、最大の課題といえるでしょう。

この二つがクリアされて初めて、子どもネットワーク可部が本当に自分の足で歩き出したといえると思います。


●一歩ずつ・・少しずつ
とはいえ、今まで書いてきた課題を、一気に解決できるわけはありません。
ようやくつかまり立ちができるようになった乳幼児が、いきなり走り出すことができないように、一歩ずつ、少しずつ・・・・歩みを確認しながら進んでいくしかないのです。

 また、何よりも大切なことは、私たちが実現しなければならない本当の課題は、安定した法人経営ではなく、たくさんの子どもたちの笑顔があふれる地域社会の実現なのです。
 
 その大きな夢の実現に向かって、一人一人の小さな夢を実現していくことが、大切なのです。
 今、2005年度の総会を控え、次年度の事業計画を立案する時期を迎えています。

 子育て支援の事業については、独立行政法人医療福祉機構(WAM)の助成事業として、「親子遊び講座」や、「積み木遊び」「講演会」などの事業がすでに実施されつつあります。
 次年度の事業計画にもこのことが盛り込まれることになります。
 遊び体験などの事業については、すでに動き出している「ファミリーキャンプ」や、昨年、可部児童館祭りと同時に開催した「よっといで市場」など例年実施されている事業が計画されていくでしょう。
 “空”のメンバーは、次の夢である、「ツリーハウス」の実現に向けて、これから計画を練っていこうとしています。

 では、鑑賞事業などその他の事業に関してはどうなっているのか・・・というと

 もちろん、総会の議決を経ていませんので、最終決定ではありませんが、劇団や講師の方などのスケジュール確保や、会場押さえの都合で、どうしても最低半年から1年前には企画を検討していかなければなりません。
 総会の議決を受けてから、劇団などと交渉していては、その実現が難しいので、どうしても事前にある程度の話しこみが必要になってきます。

 現在企画に上がっている鑑賞事業は、昨年「カマキリと月」でお世話になった、クラルテの高平さん・奥村さんによる、低学年対象の「おひさま劇場」と、新作の高学年対象の「銀河鉄道の夜」の2作品です。
 作品の内容や、質については、「おひさま劇場」についてはもちろんいうまでもありませんが、高学年対象の「銀河鉄道の夜」については、鑑賞部局担当の丸田副委員長が、3月に大阪まで下見に行って、その不思議な空間作りに感動して、「絶対にこの作品を高学年の子どもたちに見せたい!」という思い入れの強い作品です。
 
 また、可部おやこ劇場のころから、私たちは常に平和にこだわった活動を実施してきました。
被爆60年という節目の年を迎えるに当たり、何か私たちにふさわしい企画を…ということも、検討しています。
 
 それ以外にも、数人のスタッフで下見に行って、とても感動した「らくだの涙」の上映会もぜひ実現したい!と思っています。

 そして、もう一つ、私個人の10数年来の夢であった、福尾野歩さんによる「遊びっぱなしセミナー」と「遊び歌コンサート」も、ようやく実現できるかな・・・と期待に胸を膨らませています。
 もしも、野歩さんとの出会いが実現すれば、「童謡コンサート」や、昨年来継続実施している「親子遊び講座」で、私が乳幼児の保護者や、関わってくれるスタッフに伝えたいことのすべてが、一度に理解してもらえる素敵な出会いになることは間違いありません。

 これら一つ一つの企画を、慎重に検討しながら実現し、成功させていくことが、一歩ずつ一歩ずつ歩みを進めていくということに他ならないと思います。


 ●馬鹿になれ?
 それにしても、なぜ懲りずにこんなに大変なことにり組もうとしていくのでしょうか?
先日私を含め、事務局長のFさん、副委員長のMさんと一緒に、下見を兼ねて参加した、野歩さんの「遊びセミナー」のときに、挨拶に行った私たちに、野歩さんが言ってくれました。
「これから、取り組んでいくときに、一番傷つくのはお前たちなんだぜ、でもさぁ、一番傷ついた人達が、一番ご褒美をもらえるのさ、本当に馬鹿じゃなきゃ、こんなことに取り組むなんてできないけど、馬鹿は素敵だぜ、素敵な馬鹿になろうよ。」
ということで、私以下3人は、野歩さんから「3馬鹿トリオ」というありがたいニックネームをいただいたのです。

そうなんですよね、仲間を増やすっていうことは、「一緒に馬鹿になってください!」ってお願いすることなんだ・・・そう思いませんか?


委員長