- 2009年05月03日(日) 【冥土の土産】 合戦を前にして、まさに敵兵の中に切り込んでいこうとするそのせつな、この男は彼の顔を見る。その長さを測ったことがあった。1.5秒。たまたまというには長すぎる、だが咎めてみるには短すぎる。しかもその、色。 「なんだってあんな目で見た」 戦場に紅い露が降り、そしてそれも冷えてゆく夜半、彼は尋ねた。 「あんな目とは」 杯を持つ手を宙に止めて、その男は問い返した。しらばっくれる気なのか、それともこの唐突な問いに本当に意味を汲めなかったのか、そのどちらもありそうなのが片倉小十郎という男だと、政宗は知っている。 命がけで俺の背中を守っているくせに、自分より俺のほうがずっと大事なくせに、一言言えば今この場でも死んでみせるのだろうに、と、政宗は考えた。そのくせに、俺が何を考えているのかも知らぬのだ。 そして頭をわずかに傾げる。 「突撃の前に、俺を見ただろう。俺の顔をよ」 「……ああ」 小十郎は言った。その視線が向けられるのを知りながら、政宗は杯を傾ける。酒の味はしなかった。合戦の後はいつもそうだ。鼻には血のにおいしかしない、舌には血の味しかしない。着物をかけられてさえ、返り血を浴びたような気がする。たかぶっているせいだろう。右目と呼ぶ小十郎を前に、問い詰めるような話をしているのも、きっとそのせいなのだ。 「小十郎は、戦場では政宗さまの背中を守ります」 「そんなこたァ、知っている」 「背を守っているあいだ、お顔は見えませぬ。ですから」 「冥土の土産に」 政宗の手から朱塗りの杯が転げて、わずかにその底に残っていた酒が撒き散らされるあいだ、小十郎は黙って笑っていた。笑いながら、自分はいったいどういう目でこの主を見たのだろうと考えていた。 彼岸から臨むように見たのであろうか、まさに死者の目で。それとも幼かった主人を心からの慈しみをもって見ていたときのようにだろうか。そのどれでもなかったろう。だが、ではどうかと問われれば、小十郎には思案がない。彼はただ、合戦の前にいつも主人を見るようにして、この日も主人を見たのにすぎない。むしろ問われたことがおかしかった。 「戦国BASARA」伊達政宗×片倉小十郎。 なんだってまた、やったこともないゲームの話を…。 簡単に言うと、 小十郎が自分のためにいつでも死ねるのを当然だと思ってる政宗が、 でもやっぱり、実際本当に心底までそうなんだと思い知らされて、 ものごっつい動揺するところが見たかった。 恋慕に発展するなんてことは絶対まったくありえないけど、 自分より親兄弟より女房子供より政宗大事な小十郎萌え。 -
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