終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2006年01月26日(木)

 ところが電気ナマズは言う。
「なるほど結構です。しかし電気を感知するということが
 どんなかんじがするものなのか、あなたには決してわからないでしょう」
               VSラマチャンドラン『脳の中の幽霊』より

人間は、自分の持っていない感覚をほんとうには知ることがない。
たとえば音痴の私に、グールドの音楽は本当の意味では聞こえないのだ。
彼の耳が聞き、彼の心に響いたようには聞こえはしないのだ。
それは電気ウナギの持つ電気への感受性を持たないのと同じこと。
他者の心象世界、また他種の器官をついに知りえないとは、祝福が呪詛か。


というわけで体温が多分37度くらいです。
そのせいなのか何なのか昨夜から鮮明なイメージが入れ代わり立ち代わりで
脳みそが大渋滞を起している。幾つか挙げてみよう。


水中木(すいちゅうぼく)の森:
浅い淡水の広がる沼地に、無数の木々が立っている。
それはオークかブナのような大きないかつい木々で、
曇った凪の水面には、その冬枯れた影が暗く映っている。
わたしは柳葉のような細い舟に乗り、水先案内人が櫂を使っている。
「ここは昔、大きな都でした」案内人は言う。
「誇り高い人々が住まい、富がありました。今はありません」
わたしは何も言わず、舟は森を抜けていった。


石を積む男:
吹きさらしの島の台地に、もう半ば崩れかけた古い城がある。
円形の城壁をめぐってゆくと、一人の男が石を積んでいた。
「なにをしているの?」わたしは尋ねた。
こちらを向いた男は老いており、盲(めし)いていた。
「石を積んでおりますよな。城壁が崩れては困りますでな」
ひとりでは、千年かかったって終わりやしないだろうと思いながら
そう言ったとしても男は聞くまいと、私は何も言わなかった。


山脈のうちのひとつの山で:
火口からは不穏な硫黄の臭気が吹き流されていく。
わたしは丸裸の赤茶けた山腹をどんどん上っていった。
見晴るかす山脈は青く沈み、いずれも雪をかぶっていたが、
私の足元は覆うものもなく、それに山全体が本来より暖かかった。
疑いもなく、噴火が近づいているのだ。私は顔を上げた。
火口からはもう、金色をした溶岩が溢れつつあった。


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