- 2005年07月14日(木) 負け試合のラストバッターになるのは苦しいことだ。悲しいことだ。あなたはバットを構えて投手に向かう。九回裏、それとも10点差のついた五、六回、あるいは七点差の七回、アウトはすでに二つを数えている。ベンチからの声援を、ネクストバッターズサークルからの「俺に回せ」という声を、あるいは塁上の―もしかしたら同点が逆転の走者である―仲間から「還せ」という声を聞きながら、あなたは本当に思っている。打ちたいと。神を信じていたら、祈りさえするだろう。どうか打たせてください、どうかこれで終わらせないでください、打てたら死んでもいいんだ。などなど。 ボールは投げられ、あなたはバットを振る。だがボールはキャッチャーミットに収まって審判がストライクとコールする。それとも打球は力なく転がって内野手がつかみとり、必死のヘッドスライディングも届かず一塁手に投げ渡される。あるいはふらふらと浮き上がって内野手か外野手のグラブに―どうか落としてくれと願う視線の先で―収まる。そして審判がアウト、ゲームセットとコールする。 一塁線上にうずくまり、あるいはバットをグラウンドにやるせなくたたきつけ、それともはや泣きながら、それでもラストバッターは整列せねばならない。仲間は背を叩くだろう。「よくやった」と言うだろう。だがあなたにも彼らにもついに来た終わりをどうすることもできない。せめて嗚咽せよ。 ああ、10年がたっても、この打席は後悔とともにあなたがたの胸のうちに刻まれている。この打席はいわば一つの永遠な呪詛となりまた棘となって、いついつまでもあなたの中に生き続ける。それは確かに呪詛のように見えるが、あなたがたはどのような恩寵と引き換えでもあの数分の記憶を手放そうとはしない。そのときの汗や湿った土の香りさえ。 -
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