終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2004年11月16日(火)

 嵐は天にも地にもまた海にも等しく吹き荒れていた。波は身をよじるようにして堤防のコンクリートに叩きつけ、己が身を微塵に砕いて風に散り私に吹きつける。塩辛い海の水と天の真水が混ざりあって私の体の内と外とをひたしていた。それでどうして私はここにいるのだろう。ここは海ではないか。

 そうだ、ここは海。突き出した半島の先端、陸というよりも海。手を伸ばせば悠久の潮流が指の間をすりぬける海。嵐にあおられむしろ嵐をそそのかしてごうごうと海は叫ぶ。倒れそうになりながら私もまた叫んでいる。言葉もなく黙したままわが身が原始の鳴動に和するのを感じている。貧弱な声など及びもつかぬ。海よ。

 ここは海か。陸のあらゆる法の終り、人知及ばぬ異様の法の敷かれるところ。あらゆる人の願いの空しくなるところ。千年を経て揺るぎ無き無窮、善悪を問わず飲みこむ吐き出された貪欲な口。言葉なく語る無数の舌が陸を舐め減らしていくではないか。それでは私は海にいるのだ。ここは海だ。

 しかし海にたどりついたとき、そこで何をするべきかを私は知らない。何を受けとり何を投げ捨て、何を直くするべきかを私は知らない。私は貧相なカバンを背に負ってただ立ち尽し、汲むすべを知らぬ豊饒がそこに横たわり私に手を差し伸べているのを見るよりほかにない。ああもし汲むすべを知っていたなら! そのようなすべがあったなら! そうすれば私は生涯にわたって口を開く必要すらないほど豊かに満ちてそこに座りこむことができただろうに。

 このような悔恨と悲しみをおぼえさせるものだ、海は。とりわけ命に満ちる嵐の夜は。海はごうごうと鳴り響き汲まれぬ悲しさを訴えるようでさえある。そして私はこれほどの豊饒から断絶されている悲痛で胸を破る。だがそのような嘆きを嘆かずにすむものはあるだろうか。思うにそれは進み出て荒れ狂う海に自身を投げつけ、家に帰ることをやめたものだけであろう。


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