あふりかくじらノート
あふりかくじら



 造り酒屋だった。

京都で桜を待っていたのだけれど、
田舎の祖母が亡くなったとのことで
久方ぶりに父方の田舎に戻る。

徳島の山奥にある古い元造り酒屋は、
その蔵とか母屋とか古い道具やらを
すべて手放すことになるのだろう。

子どものころから転勤族だったせいで、
親戚づきあいに慣れていない。
それでよかったと思っている。
これで、また少し縁遠くなる。
こちらも三十路近くなったというのに、
あら大きくなったわねぇ、と言われる。

永い一週間だった。
祖母と二人で、あの古い家で過ごした
夜のことを思い出す。

また、京都に舞い戻って桜を迎えた。

2004年03月31日(水)
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