# 『キミはボクの耀ける宝』:シャンバギ
2002年05月18日(土)


目を奪われるほどに澄み切った青空が仰いだ先にあった。
海の青に対抗しているような。いや、きっとこの空は空なりの青さで。
風はなく。海は凪。
雲はまるで昼寝でもしているように空の青の中に身を委ね。
青い青い海原に浮かぶ大きな海賊船。
暗黒の海から甦ったような朽ち果てた姿のそれが、ぽんと突然異世界に放り込まれたように、快晴の空の下、海に浮かんでいた。
オレタチ二人だけで見つけた、でっかい拾い物。
俺のアイツは、その海賊船の甲板へと駆け上がる。

朽ちたマストが折れてひしゃげている様も、破れた帆が風のない空に垂れ下がっている様も、ひどく惨めな姿のはずなのに、どこか静かで穏やかだった。
時折うたたねから目覚めた風が頬を撫で帆布を揺らして遠く去っていく。
仰いだ空。白い太陽が目映い。
手をかざし、目を細める。
陽光は穏やかな初夏の世界を優しく包む。照らすのでも差すのでもなく、光で包む。
空は青。青は海。本日は超晴天なり。
「あ〜いい天気だなァ、バギー」
大きく腕を上に伸ばして伸びをしながら呟いて、同意を求めて振り返ると、そこにアイツはいなかった。
共に上がってきた筈の相手は、隣にも後ろにもいなかった。
腕を下ろして前を向けば、視界に入るアイツの背中。
隣でも後ろでもなく、前にいた。空を仰ぐ俺を追い越して甲板へ駆け出していく姿に、俺は目を細める。
一角でおぉと声を上げてしゃがみ込むそれに、俺はのんびりと近付く。
「何かいいモン見つけたのか?」
しゃがみこむ丸い背中に声を掛ける。
熱心に何かを見つめる横顔。
顔を上げて彼がこちらを見た。にまぁと笑う。
「だははははッ俺様のお宝発見だ!俺が先に見つけたから俺のだぞ、てめぇにゃくれてやらねぇぞ!」
声も高らかに笑い、何も云わぬそばから鼻息荒く一気にまくしたてる。
こちらが目を瞬いていると、相手は俺の反応などおかまいなしに目の前のそれに熱い視線を注ぐ。
頬を綻ばせて、嬉しそうに見つめる横顔。
「おー、さすがバギーだな。さっそくお宝発見か」
笑みで綻ぶその表情を見つめてから、彼が視線をやっている場所にどれどれ、と目を移す。
ちいさな宝箱ひとつ。きらきら輝く色とりどりの宝石。
「本当だ、結構値が張りそうな代物じゃねぇか」
顔を見て笑うと、彼が頬を崩してにぃと笑い、大きく頷いた。
「すげぇだろ、やっぱり俺の眼に狂いはなかった」
満足そうに頷いて彼が自慢げに云った。確かに船を最初に発見したのはこいつだ。
どうだ誉めろといわんばかりに胸を張るバギーの姿に、自然と俺の顔に笑みが零れる。
俺の顔を見ていた相手の視線が、不意に俺の向こう側の何かを捕らえた。
あ、と口を開いて立ち上がる。俺は、ん?と首を捻って相手を見る。
「あっちに大量のお宝発見!ハデにすげぇぞー!」
俺の脇をすり抜けて、アイツが歓声上げて駆けて行った。それを俺の目が追う。
太陽の光と青空の元、跳ねるように駆けていく背中は、幼子のようだった。
思わず目を細める。
彼が立ち止まって振り返る。
満面の笑顔で俺に、見ろよシャンクス!と遠くから呼んで、来いと手で合図する。
その笑顔は、さっきみた宝石よりもずっと輝いていて。
俺にはどこか眩しかった。
「あんまり走ると転ぶぞー」
笑いながら歩き始めた俺の掛けた声に、だァれが転ぶかァッ、ハデアホがーっ!と悪ガキのような顔で返して声高らかに笑う君の、あまりにもバカで無邪気で可愛い姿を見ているのが嬉しくて俺は笑う。
早く駆け寄っていって、いやがらせにあの赤鼻のオバカさんにむぎゅううと抱きついてやりたくて。
それから、アイツが怒ったりする可愛らしい姿を見たくて。
俺は駆け出した。





前出の『蒲公英』の基本テーマ(?)を残してシャンバギに書き換えてみました。
『蒲公英』は春ウララ、だったのですが、今回は初夏っぽく。
ゾロルバージョンは書き換え部分があまりありませんでしたが、シャンバギにする際に不都合が続出したので全面的に設定ごと書き換え。
どうでもいいが、どうしてシャンバギだとバカっぽい話になるんだろ(笑)

あー。『蒲公英 ゾロルver.』とこの『キミはボクの耀ける宝』はNovelページのTYPE Bにでも追加してしまおうかと思います(笑)稼ぐな(笑)

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