ケイケイの映画日記
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| 2026年01月20日(火) |
「アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし」 |

誰もが知っている「シンデレラ」のお話を、意地悪とされている、義姉妹に焦点を当てて描いています。色々グロくて、出てくる女たち、妹を除くとみんなビッチで、男もロクでもなくて、説教したくなるんですが、哀しいかな、観ていてビッチの方は気持ちが解るんだよ。秀逸な面白いダークホラーです。監督はエミリー・ブリックフェルト。ノルウェーの作品。
母のレベッカ(アーネ・ダール・トルプ)の再婚により、スウェランディア王国へとやってきたエルヴィラ(レア・ミレン)とアルマ(フロ・ファゲーリ)姉妹。そこには新しい父と、義理の姉アグネス(テア・ソフィー・ロック・ネス)がいました。美しくエレガントなアグネスに、憧れと嫉妬と複雑な感情を抱くエルヴィラ。しかし、アグネスの父親が急死すると、立場は一変します。
グリム童話では、意地悪な継母と義理の姉たちが、財産目当てで、シンデレラの家に入る、じゃなかったかな?しかし、今回は二方が財産目当ての再婚で、そして二方お金が無いという設定。そして再婚夫にお金が無いと解かると、失神寸前で、「冴えない娘と垂れ乳の未亡人が、どうやって次の男を探すの?」のレベッカの台詞は、「垂れ乳」のせいで笑えるんだけど、笑えない。昔々、そこそこ上流とされる家は、男が死ぬと万事休すなのですね。なので、アグネスも寝込んでいる。
舞踏会で王子様から選ばれるための予備校なんてものがあり、放り込まれるエルヴィラ。この様子がバカバカしくも切ないのよね。かのデヴィ夫人に著書に「選ばれる人におなりなさい」だっけ?男性に選ばれるための手練手管教本みたいなのがあるそうですが(認識が間違っているかも)、現在85歳前後かと思われる夫人だってそうなんですから、この時代は当たり前の思考なのでしょう。それほど太っているとは思われないエルヴィラですが、母親は厳格なダイエットを命令。育ち盛りの18歳には過酷です。その辛さを相談した予備校の教師から手渡されたのが、サナダムシの卵。この卵が、エルヴィラの人生を狂わせます。
エルヴィラは会った事もない王子に憧れており、彼の詩集が愛読書。それは王子の人格が好きなのではなく、王子と言う身分に憧れているだけ。それを表現するため、王子や取り巻きの身分の高そうな男たちの、ゲスさ加減も挿入しています。
金の為に、上流の男をどうやってゲットするかが、徹頭徹尾描かれています。私は整形迄出てくる予告編を観て、ルッキズムを問うのかと思っていましたが、そのルッキズムは何のため?が、描かれていました。身分の高い、または金持ちの男に見染められる、それしか女の出世はなかったのですね。
エルヴィラは、垢抜けないので美しいとは言えませんが、なかなかキュートな顔立ちです。しかし王子をゲットするため、整形させる母親。このシーンがですね、私は身体的にグロイのは、割りと大丈夫なのですが、出血が少量なのが返ってリアルで、もう痛い痛い痛い!当時では命懸けだったんでしょうね。それを母親がさせるとは。
舞踏会でも、アグネス=シンデレラが謎に包まれて登場すると、王子はエルヴィラを振り切り、アグネスに一目散。状況を観て、あの男この男と踊れと娘に指示する母親。狂ったように相手するエルヴィラですが、まるで廓の回し部屋です。
今の感覚では、レベッカは毒親なんでしょうが、彼女も老いの身を投げうって、あの男この男にご奉仕です。好き者なんだと思っていましたが、ラスト近くのシーンで、アルマに若い男との行為を観られ、娘を見つめる彼女の表情は、物凄く哀しい。
でも男に催促されて、娘の前で「ご奉仕」を再開します。当時としては充分老いの身の上ながら、その屈辱は解らないのでしょう。搾り取るなら天晴ですが、男から男へ寄生する以外の道を知らないのです。
アグネスもなかなかのビッチで、馬番とデキているのに、「王子様を射止めないといけないの」←駆け落ちしても構わんだろうが。彼女も当時の価値観に踊らされている。
一人、アルマのみがこの価値観の中、抗います。彼女が初潮を迎えた時、本来ならおめでたい事なのに、悔しがる様子が不憫でならない。女性としての自分を否定しているのです。アルマが老婆になったような姉エルヴィラを、家から連れ出すラストは、この物語が、一番語りたかったことではないかしら?女性を苦しめ続けた価値観からの、脱却です。
かく言うワタクシも、充分に「女の人生は男次第」を叩き込まれた世代です。それは間違いだと、今は断言します。人生は自分次第。金目当てで、男探しなんかするんじゃないよ!という、教訓がいっぱいの作品です。
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